「営業のプレゼンが通らない…」その理由がわかる“たった1つの質問”…日本一コカ・コーラを売った男性が学んだ仕事の基本とは
『コカ・コーラを日本一売った男の学びの営業日誌』#1
「いつ辞めるか」だけを考えていたダメ新人だった男性が、いかにしてセールス日本一になったのか? 今回は「あらゆる仕事の基本」が詰まっているという営業の考え方を伝授する。 【画像】全国展開のスーパーをマネージメントしている常務が放った衝撃のひと言 『コカ・コーラを日本一売った男の学びの営業日誌』 (講談社+α新書)より、一部抜粋・再構成してお届けする。
コカ・コーラ社で求められた新しい取り組み
日本コカ・コーラ社に出向してからわかったのですが、仕事では、昨年と同じことをしてもあまり評価されません。そのため組織全体でも個人が携わる仕事でも、何かしら新たな取り組みが導入されます。 その一つとして店頭起点の提案チームを編成し、全国を回るという活動が立ち上がりました。スーパーマーケットでの営業活動を顧客の視点で活性化しようという取り組みです。 市場データや業界の情報だけで店頭活動を考えるのではなく、一軒一軒のお店の実情に即した提案や販促活動を進めようというものです。 具体的には店頭で来店したお客様にアンケートをお願いし、お店に対する要望や意見を聞いて、それを基に売り場やお店づくりの提案に結び付けていくという地道な活動です。 私もこのチームに参加することになりましたが、来店したお客様の多くは突然店頭で声を掛けられてもすんなりとアンケートに応じてはくれません。私たちを避けるように店に入っていき、声を掛けてもそっけなく断られます。それでもなんとか一日中店の前でお客様の声を集めて提案を取りまとめます。 こうした活動を進めるなか、実際にスーパーマーケットで実務を担っている方から意見をお聞きしようということになりました。
「お店で実際に買い物をされましたか」
今日は全国展開をしているスーパーマーケットチェーンのマネジメントをしている井口常務を招いての勉強会です。 井口さんに対して「こんな現場活動を進めていきたいがどう思うか」「小売店から私たちに望むことはどんなことがあるのか」という質問をしながら活動のヒントにするというものです。 こちらからの問いかけが一区切りついた頃です。井口さんが私たちを見回してこう問いかけます。 「皆さんの取り組みは素晴らしいと思います。お客さんの生の声は少々厳しいものでも自分たちのお店づくりに活かしていきたいですね」 井口さんが続けます。 「ところで皆さんはそのアンケートをとったお店で実際に買い物をされましたか。私どもは全国チェーンなので共通のフォーマットでお店づくりを行い、売り場も統一されたものになっています。 しかし、実際のお店づくりや売りモノは、それぞれの立地によって少しずつ変えていかなければ地元に密着した存在にはならないのです。その違いやちょっとした工夫は実際にそのお店を利用しないとわからないのです。 皆さんがアンケートの結果だけから提案を考えているのであれば、そこには皆さんの思いが宿っていないことになります。そのお店のカゴを持って実際に買い物をしましたか。店内のお客さんの様子をご覧になりましたか。そこの惣菜を食べてみましたか。そうしているのであれば、その時どのように感じましたか」 私たちは返事に窮します。 確かにその通りです。私たち営業に携わる者の間では「顧客視点」や「現場を起点として考える」という言葉を使いますが、それを心底理解するための行動をしているのでしょうか。 「おそらくこういうことなんだろうな」と考え、人から聞いた話や調査データだけで相手の視点に立っていると思い込んでいるのではないかと気づかされました。井口常務のお話はとてもシンプルで最も大切な部分を指摘しています。井口さんがさらに続けます。 「私たちはお店づくりに関する提案を数多くいただいています。その時に毎回私が質問することの一つがこれです。私たちのお店で買い物をしたことがない営業の方の意見はこちらには届かないですね」 あらゆる仕事の基本がこの言葉に詰まっています。 文/山岡彰彦 写真/Shutterstock
---------- 山岡彰彦(やまおか あきひこ) 1980年四国コカ・コーラボトリング株式会社に入社し、営業職に就く。1995年、日本コカ・コーラ社主催の全国セールスフォースコンテストで第一位を獲得したことを契機に、ボトラー社から日本コカ・コーラ社への全国で初の出向者となる。その後、同社の教育機関で全国セールスマンの教育に携わり、グループ企業の経営企画室室長を経て、現在は複数の大学で講義、多数の日系・外資系企業で研修を行っている。 ----------
山岡彰彦