田中知之(FPM)が選んだ男の定番、今月はコレ! 「AORのコットンブロードフォーピース」
世界を舞台に活躍するDJ田中知之(FPM)さんが自らの美意識に叶った「男の定番」をご紹介する連載。今回のテーマは……。 田中知之(FPM)の「DJ目線で指南するちょいウラな定番」
常に独自の視点で独自の音楽を生み出していくDJとして世界中で活躍する田中知之(FPM)さん。音楽のみならずファッション、時計、クルマ、グルメとオールジャンルでの博覧強記を駆使した田中流「男の定番」をご紹介する連載です。今回のテーマは……。
■ AORのコットンブロードフォーピース
AORとは、アダルト・オリエンテッド・ロックの略語、ポピュラー音楽のジャンルのひとつで、70年代後半から80年代にかけて一世を風靡した都会的でメロウな音楽のこと。主なアーティストにはボズ・スキャッグス、ボビー・コールドウェル、スティーリー・ダン等が挙げられるのはご存知のとおり。お好みの読者貴兄も多いことだろう。
【Front Side】
スタイリストや各種ブランドのデザイナーやディレクターを務めるだけにとどまらず、音楽への偏執的な知識とこだわりをもち、DJ/音楽プロデューサーとしても活躍する弓削匠という男が、AORをもじった店名のレコード店「Adult Oriented Records」を東京・代々木上原に開いたのが2018年。さらにそのレコード店から派生したアパレル・ブランドが「Adult Oriented Robes」だ。
【Detail】
そんな酔狂なブランドから今季リリースされたのが、トルコのSoktas社の綿ブロード、つまりはシャツ生地を採用したジャケット、パンツ、シャツ、キャップの4ピース。大胆なオーバー・サイジングのジャケットはナロウなショルダーのラインをもち、パンツはフロントは2プリーツながらバックはヨークを擁したジーンズのようなシルエット、シャツとキャップは同ブランドの定番として細部にもこだわりが宿る。 特にユニークなのが、AORのブランドの頭文字とBS-24の記号(Breeze & Sunshine Season 2024の略。シーズンをSpring&Summerとは呼ばない)とともに洗濯時のアテンションが刺繍されているところ。4アイテムの組み合わせも自由に、汗も気にせずガンガンに着用し、あとは洗濯機にぶち込んで、洗いざらしをノンアイロンで着こなすのが気分だ。 さらに、このブランドにはSound Clothesという大テーマがあり、シーズンの代表的な各アイテムには、購入者専用にそれぞれのダウンロードコードが付き、Poor Vacationの楢原隼人氏制作のオリジナル楽曲がダウンロードできるというギミックが仕掛けられている。ファッションと音楽を縦断する酔人=弓削君らしい粋なプレゼンテーションと言えよう。レコード店にせよ、ブランドにせよ、あくまでも(A)、男の(O)、ロマン(R)を追求する彼のスタンスに、私はいつも猛烈に嫉妬してしまうのだ。
田中知之(FPM)
1966年京都生まれ。音楽プロデューサーでありDJ。それでいてクルマも時計も大好物。ヴィンテージにも精通し、服、家具問わずコレクターであり、食への造詣も深い。 2024年5月号より ※掲載商品はすべて税込み価格です
文/田中知之(FPM) 写真/鈴木泰之(Studio Log)