本国ドイツの責任者が語る、メルセデスAMGがスーパーGT・GT300で成功した理由。開発中の後継機には日本からの意見が欠かせない?
国内外のメーカーから様々なマシンが送り込まれ、バラエティ豊かなグリッドとなっているスーパーGTのGT300クラス。その中でも、外国車勢で安定して高いシェアとパフォーマンスを誇っているのがメルセデスAMGである。 2024 スーパーGT第4戦富士:決勝ハイライト(GT300) 2012年にLEON RACINGがSLS AMG GT3をデビューさせて以来、メルセデスAMGは瞬く間にGT300における人気ブランドとなっていった。SLSは4シーズンで3勝を挙げると、2016年からAMG GT3にスイッチ。すると2017年にはGOODSMILE RACINGの谷口信輝、片岡龍也組が、2018年にはLEON RACINGの黒澤治樹、蒲生尚弥組がそれぞれAMG GT3でチャンピオンに輝いた。 AMG GT3は2020年にEvoモデルが投入されて以降アップデートが行なわれていないものの、依然としてGT300で強力なマシンであることには変わりない。今季も前半戦を終えてLEONの蒲生、篠原拓朗組がランキング2番手につけており、8月の富士戦ではLEONとグッドスマイルのAMG GT3勢がワンツーフィニッシュを飾った。 SLS時代から数えると、GT300で通算12勝を記録しているメルセデスAMG。同社のカスタマーレーシング部門の責任者であるステファン・ヴェンドルは、AMG GT3の汎用性の高さや使い勝手の良さ、そして日本法人による包括的なサポートが高いパフォーマンスの鍵になっていると考えている。 「日本のパートナーチームと成し遂げてきたものを、我々は誇りに思う」 ヴェンドルはそう語る。 「我々と彼らのパートナーシップは特別で、それは強固な信頼によるものだ」 「特にLEON、グッドスマイル、R'QsはSLS時代からの付き合いで、そこから我々と共にAMGへ移行した。SLSはカスタマーチームにとって良い出発点であり、その象徴的なガルウイングは車両を選ぶ上での良い動機づけになったと思う」 「ただ日本で成功した大きな理由は、世界の他の地域と同じようなことだと思う。我々の製品はユーザーに寄り添ったもので、日本を含む世界のありとあらゆるサーキットに適合する」 「我々が構えているドイツの拠点は、日本のチームが24時間利用できるようになっている。カスタマーモータースポーツのポータルサイトもあり、そこには様々なドキュメント類やパーツショップがある」 「メルセデス・ベンツ・ジャパンのマーケティング部門も、チームをサポートするために素晴らしい仕事をしてくれている。ドイツではなかなか難しい翻訳なども手伝ってくれている」 「我々はGT300においても、カスタマーに勝つための最高の製品を提供する素晴らしいチームを形成している」 実際、チーム側からもこういったメルセデスAMG製GT3車両の使い勝手の良さを指摘するコメントが聞かれていた。かつてメルセデスAMGユーザーだったGAINERの藤井一三監督は2022年のインタビューでmotorsport.comに対し、「新しくチームを作るのであれば絶対ベンツがオススメ」だとして、整備性も良く、ヴェンドルの言うオンラインでのパーツショップで注文すればすぐにパーツが届く点も便利で楽だと述べていた。 2020年からのコロナ禍により、メルセデスAMGのレースウィークにおけるカスタマーサポートは困難な部分もあったようだが、昨年からはサポートエンジニアが現地に赴くようになった。ヴェンドルもインタビュー時には、後に延期となってしまったものの、8月31日~9月1日に予定されていた第5戦鈴鹿で数年ぶりに現地に行く予定だと話していた。 ヴェンドルはさらにこう続ける。 「カスタマーチームとの関係を維持し、彼らのフィードバックに耳を傾けることが重要だ。特に我々はAMG GT3の後継車両を開発しているので、各市場をリードしているチームからのフィードバックは重要なのだ」 開発中の後継機についてヴェンドルは、日本のスーパーGTに参戦するチームからのフィードバックが特に重要な理由について説明した。 「ヨーロッパと日本の一番の違いは気候条件だ」 「(日本は)夏はとにかく暑く、湿度が高い。一方で年初は非常に寒くなる。このマシンは、どんなコンディションでも他よりパフォーマンスを落とすことなく機能するようにしなければいけない」 「同時に(スーパーGTでは)タイヤ戦争もある。つまり日本のチームは、タイヤを作動領域に入れるために、ヨーロッパやアメリカのチームとは異なるセットアップを要求するのだ」 「これは我々にとっても、後継車両のサスペンションを設計する上で実に興味深い。日本のパートナーが何を必要としているかを念頭に置く必要がある」 その後継車両の投入時期についてはまだ確定していないようだが、ヴェンドルは既存のカスタマーチームが新型マシンを購入できる状態になれば、その全員に喜んで購入してもらえるはずだと語った。 「我々がサポートできるマシンの数に限界はないと思っている。なぜなら、我々のシステムは非常にフレキシブルだからだ。ただ私は現状の台数にも満足しているがね」 「後継車が登場した時、その(カスタマー)全員が我々のところに残ることに納得してくれたら、非常に嬉しい」
Jamie Klein/戎井健一郎