巨人の大物OBが、1年の“減刑”失格処分に疑念。「根拠がわからない」
プロ野球の熊崎勝彦コミッショナーは22日、野球賭博に関与したことで巨人から告発された高木京介投手(26)に対して、1年間の失格、巨人に制裁金500万円を科す処分を決め発表した。巨人は同日、高木投手との契約を解除したが、昨年10月に野球賭博への関与が発覚した元巨人の福田聡志投手(32)、笠原将生投手(25)、松本竜也投手(22)に対しては、事実上の野球界からの“永久追放”となる無期失格処分で、球団には1000万円の制裁金を科せられていたが、この処分の違いに疑問を呈する声が噴出した。 巨人OBでヤクルト、西武で監督を務めた広岡達朗氏も厳しい意見だ。 「まず、この処分となった根拠がわからない。NPBの調査委員会はどんな議論をしたのか。また調査委員会の出した結果報告書を受けたコミッショナーが決断するに至るまで、NPB内でどんな議論、意見を交わしたのかが、一切見えてこない。無期処分を受けた3人とは何が違って、こういう処分となったのだろうか。私は、1年の失格、500万円という制裁金の軽い、重いを論じる前に、その処分に至る経緯を野球関係者、そして信頼を失ったファンに対して明らかにしていないことのほうが問題だと思う」 コミッショナー裁定の原案となったのが、大鶴基成弁護士を委員長とするNPB調査委員会の答申。熊崎コミッショナーは、「野球賭博に関与した程度、期間、関わった後の対応を客観的に見て、(無期失格処分の)3選手との間に相当な差異が認められる」と説明、野球賭博への関与の程度と行った期間が無期処分を科した3人に比べて、約10日間と短かったことや、調査にも協力的で反省の色が濃い点などが考慮され処分に違いが出たという。 だが、広岡氏が言うように、その“考慮”に対する反対意見は、調査委員会内にはなかったのか。コミッショナーは、疑念を持たなかったのか、などの処分決定に至る議論がまったくもって見えてこない。同じ野球協約違反の行為を行い、片方が永久追放で、片方が1年の失格処分では、「納得がいかない」という声が出てくるのも当然だろう。まるで、法廷のように野球賭博に関与した期間や反省の態度で、“量刑”を決めるべき問題なのだろうか。 また同日、巨人は違法な「裏スロット店」にも高木投手が出入りしていたことを明らかにしたが、広岡氏は 「巨人の管理責任は重い」と言う。 「おそらくだが、今回、野球協約に違反する行為を行った4人は昔の黒い霧事件とは違い、八百長には手を染めておらず、“八百長していないんだから賭けくらい、いいだろう”くらいの気持ちだったんだと思う。反社会勢力と、そうやってかかわることが、いかに重大な行為かの罪の意識はなかったように思える。“野球賭博だけは関わると野球ができなくなるよ”“プロとして子供たちの手本になるには、どういう生活態度であるべきなんだ”という基本モラルを教育してこなかった巨人の責任は大きい。巨人だけでなく、球界はファンの信頼を裏切る“罪人”を出してしまったことを重く受け止め、選手の教育、管理も含めて、今後どうすべきかをしっかりと打ち出していかねばならないだろう」 広岡氏の言うように、今回の裁定処分で、一連の野球賭博問題が決着したと考えるのは大間違いである。 (文責・駒沢悟/スポーツライター)