今の日本、60歳で定年退職も可能ですか?無職世帯の支出平均額から考える
厚生労働省の調査によると、一律に定年制を定めている企業は96.9%あり、そのうち定年を60歳とする企業は72.3%、65歳とする企業は21.1%となっています。 ◆【円グラフ】60歳代の貯蓄は平均でいくら?二人以上世帯・単身世帯に分けてチェック 定年延長制度を導入する企業も増えつつありますが、定年を60歳とする企業は多くあります。 しかし、60歳で退職した場合は収入源がなくなり、年金の受給開始までは退職金や貯蓄を取り崩しながら生活しなければなりません。 今回は、60歳で定年退職は現実として可能なのか、60~64歳・無職世帯の平均支出額から考えてみます。 退職金の平均支給額や60歳代の貯蓄状況なども確認し、60歳での退職に向けてできることを考えてみましょう。 ※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
60~64歳・無職世帯の平均支出額
総務省の「家計調査 / 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表」から、60~64歳・無職世帯の平均的な支出を見てみます。 ●60~64歳・無職世帯の平均支出額 ・消費支出:25万4453円 ・非消費支出:3万3533円 ・実支出:28万7986円 なお、消費支出の内訳は以下の通りです。 ●消費支出の内訳 ・食料:7万6152円 ・住居:1万6564円 ・光熱・水道:2万3841円 ・家具・家事用品:1万967円 ・室内装備・装飾品:633円 ・被服及び履物:5398円 ・保健医療:1万6099円 ・交通・通信:3万1965円 ・教育:392円 ・教養娯楽:2万4119円 ・その他(諸雑費、交際費等):4万8956円 もちろん、世帯によって支出額は異なりますが、60~64歳・無職世帯の平均支出は約28万円となっています。 60歳で退職し、65歳から年金を受給する場合、5年間は退職金や貯蓄を取り崩しながら生活しなければなりません。
60歳で退職するためには?
60~64歳・無職世帯の平均的な支出を基に計算すれば、1年間で345万5832円、5年間で1727万9160円が必要となります。 60歳で退職しても生活できるかどうかは、以下の点を踏まえて逆算してみる必要があるでしょう。 ・老後の支出はどのくらいなのか ・退職金や企業年金はいくらもらえるのか ・貯蓄がどのくらいあるのか 65歳までの生活費を賄うだけの資産があり、65歳以降の生活設計も立てられるのであれば、60歳で退職するのも可能と考えられます。 ●退職金の平均支給額は1896万円 厚生労働省「令和5年就労条件総合調査概況」によると、勤続20年以上かつ45歳以上の退職者1人あたりの平均退職給付額は以下の通りです。 ・大学・大学院卒(管理・事務・技術職):1896万円 ・高校卒(管理・事務・技術職):1682万円 ・高校卒(現業職):1183万円 もちろん、退職金の支給額には個人差があるので一概には言えませんが、大学・大学院卒で勤続20年以上の場合、平均退職給付額は1896万円となっています。 ●60歳代の貯蓄状況 続いて金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)」から、60歳代の貯蓄状況を見てみましょう。 【二人以上世帯の場合】 ・金融資産非保有:21.0% ・100万円未満:5.9% ・100~200万円未満:4.5% ・200~300万円未満:4.3% ・300~400万円未満:3.0% ・400~500万円未満:1.9% ・500~700万円未満:7.2% ・700~1000万円未満:6.7% ・1000~1500万円未満:6.8% ・1500~2000万円未満:5.4% ・2000~3000万円未満:9.5% ・3000万円以上:20.5% ・平均値:2026万円 ・中央値:700万円 ・金融資産非保有:33.3% ・100万円未満:8.5% ・100~200万円未満:4.7% ・200~300万円未満:2.8% ・300~400万円未満:4.3% ・400~500万円未満:2.4% ・500~700万円未満:3.5% ・700~1000万円未満:2.8% ・1000~1500万円未満:6.6% ・1500~2000万円未満:4.5% ・2000~3000万円未満:8.0% ・3000万円以上:15.1% ・平均値:1468万円 ・中央値:210万円 平均値で見ればある程度の貯蓄ができているようにも思えますが、より実態に近いのは中央値です。 退職金の支給額にもよりますが、中央値程度の貯蓄では、60歳での退職は現実的とは言えないでしょう。