石破首相と賃貸業界団体の深い関係…就任1週間で面会した“唯一の民間人”とは
【不動産業界 噂の現場】#2 石破茂首相就任から1週間後の10月8日。総理のもとをひとりの男性が訪れた。全国賃貸住宅経営者政治連盟(ちんたい政連)の高橋誠一会長である。 賃貸審査に落ちる“無職”の罠…年収20億円の超富裕層インフルエンサーでもNGのナゼ? 「その日の総理は政権移行に加え、解散総選挙に向けた準備に追われ、内閣や自民党の要職者、各省庁幹部との打ち合わせが続いていました。その中で民間人との面会は高橋氏だけ。異例の厚遇でした」(政治部記者) 実は石破首相は不動産業界とのつながりが深く、「賃貸住宅対策議員連盟」(ちんたい議連)の会長として以前から活動してきたことは、あまり知られていない。 一方、高橋氏はどんな人物か、不動産関連団体の職員が語る。 「地味な領域とされていた賃貸管理業に商機を見いだし、一代で関東トップクラスの不動産会社を築き上げた経営者です。同時に長年にわたり業界団体でも中心的な役割を果たしてきた、いわば顔役です」 賃貸管理とは所有者に代わって建物の維持や家賃の収納などをする、大家の代理人だ。2021年には管理業が法制度化され、近年になり業界発展の機運が高まっている。この背景には、高橋氏が代表を務めるちんたい政連の働きかけがあったとされる。また、ちんたい政連を母体とする自民党ちんたい支部連合会は党員約4万人を擁する自民党最大級の職域支部だ。こちらも高橋氏が代表を兼務している。 議員連盟はこうした業界団体とも連携し、家賃の消費税非課税化、定期借家権制度導入を実現してきた。また、東日本大震災時に「みなし仮設住宅」制度を創設、7万部屋の民間賃貸住宅を被災者に提供し、その後の被災地でも同様の支援を可能としてきた。 ■業界の悲願「借地借家法の見直し」なるか では、石破政権ではどんな課題に取り組もうとしているのだろうか? 「業界側が期待するのは、ちんたい政連も提言する借地借家法の見直しです。戦前・戦後の住宅不足時代に制定された法律で、借りる側の権利が強い。今は3カ月以上の家賃滞納がないと大家から裁判も起こせません。そのため、入居審査や保証人の条件を厳格化せざるを得なくなり、市場がいびつになっています。ここにメスを入れるのは業界の悲願です」(業界紙記者) もちろん、ことは単純ではない。諸外国では、不況時に家賃滞納者の強制退去が増加し、ホームレス問題や治安悪化を招くことが問題視される。つまり、借地借家法の大幅な改正は日本社会そのものに影響を与えかねない難題で、多くの反発も予想されるのだ。 しかし、冒頭の面会以降、石破政権は衆院選で敗北し、政権運営は難しい舵取りを余儀なくされそうだ。難題に取り組む余裕はなく、不動産業界の悲願はまたも遠のいたとみられる。 (小野悠史/ニュースライター)