愛知県で開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で芸術監督を務めるジャーナリストの津田大介氏が2日午後、東京の外国特派員協会で記者会見を行った。 【動画】「表現の不自由展」中止問題　芸術監督の津田大介氏が会見

「政治家の圧力が原因ではない」

[写真]会見する津田氏

　8月に開幕したあいちトリエンナーレでは、公立美術館などで展示が不許可になったり撤去されたりした作品を展示するコンセプトで「表現の不自由展・その後」を企画したが、そこに展示されていた元慰安婦を象徴する少女像などが波紋を広げ、抗議電話が殺到したほかガソリンテロを想像させる脅迫FAXが届き、展示は3日に中止された。 　この間、名古屋市の河村たかし市長が中止を求めたほか、菅義偉官房長官が同展に補助金が出ていることに絡めて「精査する」と発言していたことから、「中止決定は校閲だったのではないか」「政治家から介入が中止原因か」などの議論がある。それに対して津田氏は「政治家の圧力が原因ではない。事務局の機能麻痺とテロの不安が理由。（展示を）円滑運営できないための苦渋の決断だった」と語った。 　抗議への事前想定など「詰めてやっていたつもりだったが、予想外の出来事も起こった」と述べ、（1）日韓関係の急速な悪化、（2）補助金に触れながらの政治家による内容に介入する発言、（3）開幕2週間前に京都アニメーションの放火事件が起きたこと、など3点を挙げた。特に京アニの事件で「リアリティが大きかった。これが職員の精神を追い詰めてしまった」と述べた。 　展示再開については「僕の立場では明言できないし、一存では決められない」と説明。警備などを強化するコストをどう負担するか、苛烈な抗議活動への対策をどう行えばいいか、などの課題があると指摘し、判断はガバナンスの問題を含めた検証委員会の中間報告を待つべきだとした。 　ただ自身が2015年に見た「不自由展」を「パブリックセクターできちんと説明しながら議論する」ことを今回のトリエンナーレで実現したかったといい、「僕自身が最後まで見たかった。（中止に）全く納得していない」とも述べた。