1キロ当たり70万円も “白いダイヤ” シラスウナギ漁はどんな漁か
静岡県中部、大井川河口にほど近い漁港の護岸。陽が落ち周囲が暗闇に包まれた頃、ポツリポツリと小さな灯が海沿いにつきはじめる。ウナギの稚魚、シラスウナギをとる人たちが海中に浮かべる電光だ。シラスウナギ漁はどのように行われているのだろうか? ウナギ完全養殖の実験成功から6年、いまだ市場に出回らない理由とは
1キロ当たり50万円から70万円
「満月の夜は明かるすぎてダメだね。波が立つ風が強い日、海が荒れている日はたくさんシラスウナギが上がってくる」 ── こう話すのはシラスウナギ採捕組合の組合長を務める落合利春さん。 ウナギの稚魚は大平洋のマリアナ海溝付近で夏に生まれ、黒潮に乗って中国、台湾、日本、韓国周辺に到達する。そのシラスウナギをとる漁は、静岡県では12月に解禁し、翌年4月まで行われる。 相場によるが、高い時は1キロ当たり50万円から70万円もの値で取引され、白いダイヤとも称されるシラスウナギの漁には県の許可証が必要だ。許可証は地域ごとにあるシラスウナギの採捕組合に入っている者に限り与えられる。 県によると、静岡県には採捕組合が約20あり、約1000人がシラスウナギ漁に従事しているという。落合さんが組合長を務める採捕組合は180人以上のメンバーを抱え、県内でも大きな組合だ。「昔は漁師が冬場の仕事としてシラスウナギをとることが多かったが、今は会社勤めの人もいれば無職の人もいる」と落合さん。 県の許可証の数は限られているため、新しくシラスウナギ漁をしたい人は、組合に欠員が出るのを待たなければならない。落合さんの組合でも30人もの人が欠員待ちをしているという。欠員が出たらくじ引きで新しいメンバーを決めるのだ。
漁の仕方は人それぞれ
大井川河口近くの港の護岸には、夜になると落合さんの組合のメンバーが自動車などで現れ、所定の位置に小さな椅子を置いて電灯を海面に垂らし始める。シラスウナギ漁をする場所も組合ごとに決められていて、その範囲の中で漁をしなければならない。防寒着を着こんで椅子に座り、左手にタモをもったまま、電光がまぶしい海面を見つめる。 すると、突然、ヒュルヒュルと糸のようなものがどこからともなく海面に現れた。シラスウナギだ。サッと左手のタモで海面を泳ぐシラスウナギをすくい、水を入れたバケツの中に落とす。バケツの中には、そうしてとったシラスウナギが泳ぎ回っている。 いずれも4~5センチくらい、ほんのりピンク色を帯びた白色透明のシラスウナギは、身体をくねらせて俊敏に泳ぐ。「どこに現れるかわからないから常に海面を見ていないといけない」と落合さん。漁の仕方は、それぞれが工夫をして行っているという。