１回、バットを折りながら先制適時打を放つ佐藤輝（撮影・田中太一）

　「中日５－５阪神」（１７日、バンテリンドーム） 　無念のドローで喜べぬ猛打賞となった。阪神・佐藤輝が先制打を含む３安打２打点。５点目もたたき出して勝機を高めたに見えたが、白星には直結せず。「チャンスでも打てたので、それは良かったと思います」と４番の仕事を果たしても、試合後は神妙な表情を崩すことなく、バスに乗り込んだ。 【写真】また佐藤輝の拙守で激痛ドロー　どこにも投げられず思わず目が泳ぐ 　初回から絶好機に打順が巡った。１死一、二塁、メヒアの高め直球をはじき返すと、バットを折られながらも打球は右前で弾んで、先制適時打。「いい当たりではなかったですが、形はどうであれタイムリーになってくれて良かったです」。チームに勢いを与えるべく、最初の１点をスコアボードに刻んだ。 　三回無死一塁でも一、二塁間を鋭く破ってチャンスを広げ、同点劇の呼び水となった。六回は１点を勝ち越した直後の２死二塁で、「チャンスの場面だったので、ランナーをかえすことだけを意識してました」と逆方向に運ぶ適時打を放って、２打点目を挙げた。チーム最多タイとなる今季６度目の３安打をマーク。複数打点は６日・ヤクルト戦（神宮）以来、１０試合ぶりとなった。 　オールスター明けから今月上旬にかけての、絶好調ぶりをほうふつさせる固め打ち。両手に好感触を残して、「練習してるので、打てて良かったです」とうなずいた。 　ただ、打の貢献と守のミスは、残酷なコントラストだった。勝利目前の九回２死、三遊間への福永の打球を巡って、状況判断を誤って２失点につながった。「難しいプレーだと思うんですけど、次ああいう場面が来たら、もう一ついいプレーができるように頑張ります」。反省しつつ、成長への糧とした。 　下位チームを相手に４番が快音を３度奏でても、勝ちきれなかった。左翼席一角を埋めた虎党の期待に応えることはできなかった。それでもまだ、うつむく時ではない。「また切り替えて、明日頑張ります」。主砲が前を向く限り、猛虎の戦いは続く。