スペースワン、「カイロス」ロケット2号機に台湾宇宙機関を含む衛星5機を搭載
12月14日に打ち上げられる「カイロス」ロケット2号機に搭載される貨物(ペイロード)をスペースワン(東京都港区)が11月12日に明らかにした。搭載される衛星は5機。 搭載されるのはSpace Cubics、テラスペース、広尾学園(東京都港区、ラグラポが支援)の3者と台湾の宇宙機関である台湾国家宇宙センター(TAiwan Space Agency:TASA)の衛星。もう1機は非公開としている。 2018年6月に設立されたSpace Cubics(札幌市中央区)は、宇宙用コンピューターの開発が専門。同社は民生コンピューターの開発者と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の職員がタッグを組んで立ち上げた初の共同設立型JAXAベンチャーと説明。宇宙空間をはじめとする過酷な環境で動作するコンピューターの開発に特化しているという。 自社製品のキューブサット用コンピューター「SC-OBC Module A1」をはじめ、衛星や宇宙探査機、宇宙用ロボットといったさまざまな機器向けにコンピューターを開発した実績があるとしている。 今回、カイロス2号機に搭載される3Uのキューブサット「SC-Sat1」にはSC-OBC Module A1が2台搭載され、キューブサットの制御を担う。SC-Sat1の長期運用で宇宙空間でのSC-OBC Module A1の耐障害性能を実証する。 2020年創業のテラスペース(京都府京田辺市)は、超小型衛星を開発している。カイロス2号で打ち上げる、同社初の超小型衛星「TATARA-1」の打ち上げを皮切りに今後、人工衛星の「軌道上サービス」事業を提供するという。衛星軌道投入やホステッドペイロードをはじめとした軌道上サービスを通して「宇宙をより身近に」をモットーに「Space Operations Platform」を目指していくとしている。 広尾学園は2007年創設の中学高校一貫校。2011年に、日本の中学高校レベルの枠を超えたという研究活動を軸とする医進・サイエンスコースを開設。8つの研究領域を設定し、数々の学会発表やコンテスト受賞を積み重ねてきたと説明する。 毎年、宇宙天文合宿を実施し、国立天文台やJAXAの職員、米航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士を招いた講演会を開いてきたが、生徒たちの中から海外大学で宇宙工学を学ぶ卒業生が生まれ、その後輩たちが衛星プロジェクトに参加。第1弾として「ISHIKI」衛星をカイロス2号で打ち上げる。 広尾学園の打ち上げを支援するラグラポ(東京都中央区)は、実際の宇宙開発の経験を持つ専門家が所属しており、代表の高野宗之氏は、三菱重工業で「H-IIA」ロケットの設計や打ち上げ、JAXAで国際宇宙ステーション補給機(HTV、愛称「こうのとり」)の開発にも従事した経験があると説明。実際の宇宙事業の経験をもとにした非宇宙企業向けのプロジェクトマネジメント『すごいプロジェクト』は、大変に効果の高いコンサルティングとして評価されているという。 今回、宇宙開発に今まで参入してこなかった多くの方に実際の宇宙開発を経験してもらい宇宙開発の裾野を少しでも広げる事業として、新しく「LAGRAPO 人工衛星プロジェクト」をスタートさせた。 ISHIKIは広尾学園の高校生が実際の衛星製造から打ち上げまでの一連の作業を経験する。ラグラポは企画から衛星製造、全体運営、ロケット調達、資金調達などプロジェクトの全ての業務を担った。 TASAは宇宙計画の実行、宇宙インフラの構築、宇宙産業の発展を進めている。主に国家衛星やロケット計画の運営を担い、宇宙産業の成長や人材育成にも注力している。 現在、低軌道上で衛星「FORMOSAT」(福爾摩沙衛星、Republic Of China Satellite:ROCSAT)シリーズの光学リモートセンシングの5号、気象観測の7号などを運用している。今後はFORMOSATの8号や9号のプロジェクト、低軌道通信実験衛星、軌道ロケット計画などさまざまな宇宙プロジェクトを推進していくという。 カイロス2号機は12月14日午前11時~11時20分にスペースワンの射場「スペースポート紀伊」(和歌山県串本町)から打ち上げられる予定。初号機は8月13日に打ち上げられたが、5秒後に爆発。機体自身が異常を検知したことによる自律破壊だった。
UchuBizスタッフ