「光る君へ」恐ろしい女社会をサバイブするには?左衛門の内侍役・菅野莉央が学んだ処世術
女房装束については一人一人、基調となる色や柄が決まっているほか“マイ扇”もあるのだとか。「衣装合わせの時に“この人はこの組み合わせで”みたいな感じで、羽織るものも決められているんです。まるで制服のようで、キャストが“出勤”するとみな自分のカラーの装束のところに立って着付けしていただくんですけど、1枚1枚に綺麗な刺繍などが施されていて、それを踏んで歩くのがしのびないと思うほどで。お衣装のみならず調度品、枕周り、几帳にかかっているものなど“ここまで映るのかな”と思うような細部まで作り込まれているので、演じる側としては入り込みやすいですし、贅沢な場を用意していただいているなと実感しています。ちなみに左衛門の内侍の扇には鳥獣戯画のような柄が入っています。扇の大きさも役職、位が上がるにつれて大きくなっていて、リーダーの宮の宣旨さんの扇はものすごく大きくて、まひろさんは開き具合も狭くて小ぶりなサイズ感になっています(笑)」
劇中、左衛門の内侍は、藤壺にあがったまひろを早々から敵視。ほかの女房たちと違って身分が高くないにもかかわらず、帝(一条天皇/塩野瑛久)に献上する物語を執筆することを主な仕事とし、左大臣・道長(柄本佑)ら公卿たちがまひろを認識しているのも面白くない。宮中での生活に慣れず寝坊をしたまひろに嫌味を言ったり冷ややかな態度をとり、まひろが彰子に気に入られたことで嫉妬心がメラメラ。ある晩、まひろと道長が親密そうに話す様子を目撃した左衛門の内侍は、第36回で倫子(黒木華)と彰子のもとで働く女房の赤染衛門(凰稀かなめ)に、二人がただならぬ関係にあるようだと密告する。そうして負の感情にとらわれていく左衛門の内侍の心情を、菅野はこう分析する。
「ずっとこの狭い世界で生きてきて、自分の役割に固執している彼女にとって、まひろが入ってきたことで自分の座が脅かされることへの焦りとか警戒心みたいなものはあったと思います。実際に、自分が何年もかけて得たポジションを、この数日で入ってきたまひろにあっさり奪われてしまったわけなので。その悔しさが、突発的に告げ口という形で出てしまったんだろうなと。“怖い、これから先どうなっちゃうんだろう”と。でも、そういうことって昔も現代も同じなんだなって思いました」