金足農・吉田輝星で問題となった球児の球数問題を米国ではどう対処?
100回記念の夏の甲子園大会は、大阪桐蔭が2度目の春夏連覇を達成したが、旋風を巻き起こした準優勝の金足農業のエース、吉田輝星投手(3年)の「球数問題」が波紋を広げている。準決勝までの5試合にすべて完投。決勝では下半身に力が入らない状態となり、12失点、主将が監督に意見して疲労困憊のエースは5回でマウンドを降りたが、大会の総球数は881球に至った。秋田県大会でも5試合すべてを一人で投げきり、球数は636球を数え、この短い期間に、総球数は1517球となった。将来有望な投手が投げ過ぎているのではないかという意見が出てくるのも当然で、高野連が、球数制限案を検討し始めているとの報道もある。 では、米国の高校野球界では、投手の酷使問題にどう対処しているのだろうか? 実は、米国の高校野球では、昨年から、ほとんどの州で投球数制限と休養日規則が導入されている。投球過多から高校生投手を守るためである。これまでにも投球を制限する規則はあったが、1週間に30アウトまでで3試合登板までというものや、イニング数を制限するものだった。これがより厳密に投球数を制限することになった。 米国カリフォルニア州は最も高校野球の盛んな州のひとつ。カリフォルニア州の高校野球部の投球数制限と休養日規則は以下のようになっている。 (1)1試合につき、110球まで。76球以上投げた選手は、3日間休む。 (2)51から75球を投げた選手は、2日間休む。 31から50球投げた選手は、1日休む。 (3)1から30球を投げた選手は、休みなく翌日の試合も登板することができる。 加えて、高校野球部の新人チームや二軍チームでは、1日に90球までと決められている。 他の州の規則も、これと似たような内容だ。 米国の高校野球は、原則7イニング制である。当然のことながら、7イニング制ならば9イニング制よりも、110球で完投できる確率は高くなる。 また、米国の高校野球は、リーグ戦形式で試合をすることが多い。シーズン中のリーグ戦は1週間に2、3試合で、投手起用のやりくりもしやすい。日本の高校野球のように地方大会からトーナメント形式で、勝ちあがるたびに登板数が増え、連日の登板になるのとは事情が違う。そういった観点からも、米国の投球数制限を、そのまま日本の高校野球に適用するのは難しいのかもしれない。 ただし、米国でも、州の優勝校を決めるプレーオフはトーナメント形式が多い。投球数制限と休養日規則のため、金足農の吉田のようにエースが連投して、投げ抜くストーリーは生まれないが、監督が自チームの選手の長所を生かそうとする継投策と、それに応えようとする高校生投手たちのドラマはある。