「ふるさと納税を地域問題解決に」制度のあり方考える初の全国首長会議
返礼品の上限3割通知、国と地方の対立ではない
総務省自治税務局の池田達雄・市町村税課長は、前年度はふるさと納税の受け入れが多かった上位200自治体で全体の約7割を占めるなど、「豪華な返礼品」によって一部に集中している側面を指摘。ふるさと納税を募集する際に具体的な事業を選択できる自治体が1割程度で、受入額の実績・活用状況のいずれも公表していない自治体が15%あるなど、納税者が支援した自治体を訪ねてみたいという人の動きにつながるような「公表の工夫が必要なのでは」と課題を述べた。 4月から、総務省が寄付額の「3割」とした返礼品上限の通知については、「(受入額)上位200団体には個別に見直しの通知もして、9割以上の団体にふるさと納税健全発展の一点で応じてもらった。国と地方の対立のような報道があるが、いい制度であり、どう発展させていくか試行錯誤しているのは総務省も同じ」と新たな目安を設けたことに理解を求めた。
人口増、産業振興……ふるさと納税が地域の問題解決のきっかけ
「ふるさと納税を活用した地域の問題解決」と題したパネルディスカッションでは、同自治体連合の共同代表を務める竹中貢・北海道上士幌町長と黒田成彦・長崎県平戸市長が登場。竹中町長は少子化対策の基金や首都圏からの移住など施策が人口増につながったこと、黒田市長はふるさと納税で注目を集めたことが地場産業振興になり、首都圏での販路拡大に成功するなど、制度が地域活性化のきっかけとなった先進事例を報告した。 ふるさと納税制度は2008年に導入。10年目を迎え、都市部の税源を奪っているという指摘や高額納税者に有利などの批判が出てきたことから、豪華な返礼品競争に歯止めをかける狙いもあり、総務省が寄付額の3割を上限とするよう、4月1日付けで自粛を求める通知を出した。 こうした制度の問題点を指摘する声がある一方で、寄付者は自分の意思で納税先を選ぶことができるという納税者主権の考えや、地方の行政サービスを受けて育った後、都市部で就職するというライフサイクルの中で都市から地方へ税を還元できる手段、自ら魅力や成果を発信することによる自治体政策の向上などといった、ふるさと納税の理念をさらに育て、発展させるべきという考えから、5月に27自治体で同自治体連合を発足。参加自治体数は7月初めまでに、計68自治体(8府県28市31町1村)に増えている。