<スコアブック>第93回選抜高校野球 贈る土に職人の心
<2021 第93回センバツ高校野球> 2年ぶりに開催されているセンバツも決勝を残すのみ。既に30校が甲子園を去った。 甲子園大会では、敗れたチームがグラウンドの土を集めて持ち帰る姿が恒例だった。しかし、今大会は新型コロナウイルス感染防止の観点から認められていない。代わりに球場側が用意した土が選手たちに贈られる。 昨夏の甲子園交流試合でも同様の対応が取られたが、インターネット上では「どうせ倉庫の土」などの声が上がった。だが実際には、グラウンド整備を担当する「阪神園芸」の職員らが、グラウンドから集めてふるいにかけたものだ。 同社甲子園施設部長の金沢健児さん(53)は「確かに倉庫の土と同じものだが、選手にとっては全く意味が違うはず。憧れの場所、憧れの選手、先輩が踏んできた土。自分もそれを踏んだということを思い出させるもの」と強調。さらに「普段なら自分たちで取って持ち帰るもの。今の選手たちはそれを味わえないので、できることはしたい」と胸の内を明かす。 阪神園芸といえば、野球ファンの間で「神整備」と称されるスピーディーかつ丁寧な整備作業が有名だ。熟練の職人技にとどまらず、球児の気持ちをくんだ「神対応」でもコロナ禍の選手たちの背中を押している。【森野俊】