【大学トレンド】値上がりする学費、30年前と比べると? 授業料「無償化」方針の一方で
政府が2023年12月に発表した、子ども3人以上の多子世帯を対象とする「大学授業料の無償化」が話題になっています。2025年度から所得制限がなく実施する方針ですが、果たして実現するのでしょうか。そもそも大学の学費はどの程度かかり、最低限でどの程度用意しておけばいいのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの藤川太さんが解説します。 【いくら必要?】文系、理系、医歯系…4年間で必要なお金は?
政府は少子化対策の一つとして、2025年度から3人以上の子どもがいる世帯は、大学の授業料と入学金を無償化する方針を発表しています。現行の制度では、世帯収入によっては支援がありますが、新たな方針では所得制限がなくなります。藤川さんは、次のように話します。 「扶養する子どもが3人以上いる場合に対象となるので、第3子が大学に入学する段階で第1子が就職して扶養から外れていると、対象にはなりません。所得制限がないとはいえ、限定的な無償化と言えるでしょう」 そもそも大学の学費は、どの程度かかるのでしょうか。藤川さんによると、「大学の学費は値上がりし続けている費目の一つ」です。大学志願者数がピークだった1992年度と2021年度の年間授業料、入学料を比べると、次の通りになっています。授業料が特に値上がりしており、約30年で1.5倍くらいに上がっています。
学費が上がりやすいのは?
学費は、大学が国立か公立か私立か、学部によって異なります。国立大学の場合は、標準額が定められており、その額は2005年から変わっていません。ただし、国立大学は04年度から独立行政法人化しているので、授業料は独自に定めることができます。上限が決められているため標準額である53万5800円から大幅に上がることはありませんが、例えば東京芸術大学は年間約64万円(2019年度以降の入学生)です。実技系の大学は、標準額より高くなる傾向があります。 公立大学は、大学ごとに異なりますが、授業料は国立大学と大きな差はありません。入学料は、多くの場合、大学がある地域の出身者か、地域外の出身者かによって異なり、地域外は地域内の出身者より10万~20万円程度高く設定されています。 私立大学は、大学、学部によって異なり、授業料、入学料のほかに施設設備費などがかかります。学部系統別の4年間(医歯薬、獣医は6年間)の学費(入学料、授業料、施設設備費)の平均額は次のようになっています。 「文系に比べて理工系、芸術系、保健系は、学費が高いです。私立の医学部や歯学部の学費の高さは突出しています。最近はデータサイエンス学部など、文理融合系の学部が増え、学費についても単純に文系、理系と分けづらくなっています。文理融合系は実技が多かったり、理工系の要素が強かったりすると、学費が高くなる傾向があり、平均額は参考にならないことが多くなっています」 また、同じ学部でも学科によって授業料が異なることもあります。