【大学トレンド】値上がりする学費、30年前と比べると? 授業料「無償化」方針の一方で
約半数が奨学金を利用
入学後にかかる費用は学費だけではありません。交通費や教材費のほか、実家を出て生活する場合は、家賃、食費、光熱費などの生活費がかかります。 「交通費や教材費は高校でもかかるので見逃しやすいのですが、通うのが遠くなる大学だと、それだけ交通費がかかりますし、教材もより専門的なものが必要になるので費用が高くなりやすく、意外とかかるという印象を持つ人が多いようです」 現在、大学生の約半数は何らかの奨学金を利用しています。自宅外生の場合、親からの仕送り額は以前に比べて減少しています。つまり、以前に比べ経済的に余裕がなくなっている家庭が多いというのが現状です。 大学受験前や受験時にも、お金がかかります。 「予備校や塾に通う場合、塾代も値上がりしています。予備校や科目数にもよりますが、20年ほど前は家計分析をする際に塾代として年間100万円くらいの見積もりが多かったのですが、今は年間150万円程度になることも珍しくありません」 受験料は近年大幅な値上がりはありませんが、一般選抜での受験の場合、併願校が多くなりやすく、まとまった額が必要になります。
学費について家族で共有を
浪人することになった場合は、さらに費用がかかります。入学してからも海外留学や留年などによって、想定外の費用がかかることも考えられます。どれだけの費用を準備しておけばいいのかを考えると際限がないようで不安になりますが、藤川さんは高校生の段階で準備しておいたほうがいい額について「最低200万円」と言います。 「足りない分は収入から回しつつ、それでも足りなければ教育ローンや奨学金を利用する方法があります。大学でかかる費用は、基本的には4年間と限られているので、そこをどう乗り切るかを考えれば、気持ちは楽になるのではないでしょうか」 藤川さんは以前、大学生の子どもをもつ父親から、次のような相談を受けたそうです。 「お子さんが米国に留学して学位を取得したいと言うので、年間600万円程度の学費を出してあげたそうです。2年で取得できるはずだったのに、4年目に突入することになり、その方は借金を重ねてほぼ破綻状態となり、相談に来られました。お金のことは、子どもにはもちろん、妻にも相談していなかったと言うのです。妻は一生懸命、子どものことを応援しているので、言い出しにくかったようですが、このケースの問題点は、本来は家族で乗り切るべきことを、夫一人で抱えてしまったことです」 このような事態を避けるためにも、藤川さんは「お金の話は家族で共有したほうがいい」と話します。 「親がどれくらいの学費を負担しているのか、どれほどの苦労をして学費を捻出しているのか、子どもは知っておくべきだと思います。ライフプランについてしっかり考えるようになりますし、将来、お金の失敗もしにくくなるはずです」 保護者としては、子どもにお金の心配はさせたくないと考えがちです。しかし、大学進学について家族で話し合うなかで、お金の話もできると、大学で学ぶことへの意識もより高くなるのではないでしょうか。
プロフィール
藤川太/生活デザイン代表取締役社長。ファイナンシャルプランナーCFP®認定者、宅地建物取引士。慶應義塾大学大学院理工学研究科修了後、自動車会社で燃料電池自動車の研究開発に従事。1998年にファイナンシャルプランナーとして独立。家計の個人相談の普及を目指し、2001年に「家計の見直し相談センター」を設立。3万世帯を超える家計診断を行っている。著書に『やっぱりサラリーマンは2度破産する』(朝日新聞出版)、『年収が上がらなくてもお金が増える生き方』(プレジデント社)など多数。
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