ファミマとセブンが「伊藤忠化」する――? 経営陣による「9兆円」MBO、日本史上最大の企業買収劇のゆくえ
セブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ)が、カナダの小売大手アリマンタシォン・クシュタール(以下、クシュタール)からの買収提案に対抗する形で、9兆円規模の経営陣による買収、いわゆるMBOを検討していると一部の報道機関が伝えた。 【画像】伊藤忠商事はファミリーマートを実質完全子会社としている 特筆すべきは、このMBOにファミリーマートの親会社である伊藤忠商事が関与するという観測ではないだろうか。この動きは、長らく維持されてきた国内コンビニ大手3社、セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンの「均衡」を崩す可能性もありそうだ。 クシュタールは10月にこれまでの買収提案から約2割上乗せし、約7兆円の買収案をセブン&アイに再提示した。この提案は、セブン-イレブンのブランド力と店舗網をグローバル戦略に取り込み、特にアジアや米国市場での競争優位性を高める狙いがあるとされる。 一方、セブン&アイはこれに対抗するため、創業家などを中心に、MBOによる非上場化を検討しているという。創業家とはいえ、9兆円という天文学的なキャッシュを用意することはできるのだろうか。 この点、実質的なキャッシュの出し手は「伊藤忠商事」に加え、セブン&アイ主力銀行の「三井住友銀行」を筆頭とした「3メガバンク」になる可能性が高いと見られている。伊藤忠の資本参加による資金提供と、各銀行によるMBO用の協調的な融資プログラムが実現すれば、本件は日本企業としては史上最大のM&Aを成し遂げることになる。
株式市場は"半信半疑"
セブン&アイの株価は今年8月には時価総額4兆円ほどしかなかったが、買収提案が取り沙汰されてからは株価は上り調子となり時価総額は記事執筆時点で約6.6兆円まで膨れ上がった。しかし、MBOが9兆円規模といわれていることに比べれば、市場価格は低い。 これはつまり株式市場では、MBOの成立についてはいまだに”半信半疑”とみられていることになる。6.6兆円という時価総額はクシュタールの買収提案金額よりも低いため、今後もセブン&アイの動向は相当に流動的な展開が予想されるだろう。