ファミマとセブンが「伊藤忠化」する――? 経営陣による「9兆円」MBO、日本史上最大の企業買収劇のゆくえ
独占禁止法のハードルも?
市場がMBOの成立について半信半疑なのは、「資金が用意できるか」という理由以外に、独占禁止法上の懸念もある。 伊藤忠商事はファミリーマートを実質完全子会社としている。今回のMBOが成立した場合、セブンイレブンの持ち株比率は30%程度になるという見方が強いものの、国内コンビニ大手3社のうち、2社が同一資本の関与の下に置かれることは、市場の競争を過度に制限する可能性がある。 公正取引委員会(公取委)としては、このMBOが実現した場合、独占禁止法の観点から厳格な審査を行うことが予想される。公取委は、取引が市場競争に与える影響を精査し、必要に応じて条件付きの承認や取引差し止め命令を行う権限を持つ。 ファミリーマートとセブン-イレブンの連携が進むと、商品供給や物流の効率化が期待される一方で、市場での価格競争が減少し、消費者に不利益をもたらすリスクもある。 今回のMBOが独占禁止法に抵触するかどうかは、今後の公取委の審査などにも左右される。ただし、MBOが成立しなかった場合、クシュタールによる企業買収が行われ、影響力が高い日本企業が外国企業に買われてしまうというリスクも残る。 政府や規制当局としてもこの問題には慎重にならざるを得ないだろう。
セブン-イレブンと旧財閥系企業との関係
コンビニチェーン業界は、スーパー業界と同様、これまで旧財閥系企業とのむすびつきが強い業界である。「ローソンと三菱(商事)」「ファミリーマートと伊藤忠(商事)」の関係は有名で、セブン-イレブンだけが大手3社の中で「独立系」という見方もされてきた。 しかし、一部ではセブン-イレブンは「三井系」と言及されることもある。その理由は、三井物産との長年の関係に起因する。 米セブン-イレブンのフランチャイズ権を取得していたイトーヨーカ堂(現セブン&アイ・ホールディングス)が日本で事業を本格拡大した際、三井物産と資本・業務の両面で包括的な提携を行ったことが、今日のセブン-イレブンを作っているからだ。 2005年には三井物産がイトーヨーカ堂グループの株式を買い付けたことで、同年9月に設立されたセブン&アイ・ホールディングスの大株主に三井物産が名を連ねることとなった。 実際のところ三井物産や三井住友銀行は、セブン-イレブンの物流・金融網の構築を支え、成長に不可欠な存在となっている。 例えば、三井物産の物流や流通業界におけるノウハウ・販路・物流網がセブン-イレブンの効率的な商品供給体制や在庫管理の実現に貢献している。加えて、三井住友銀行はセブン-イレブンのメインバンクとして、財務面で強力なバックアップ役を果たしている。ちなみに、セブン銀行の筆頭株主も三井住友銀行である(投資信託の運用期間やグループ関係企業を除く)。 セブン-イレブンが海外市場、特にタイを中止としたアジア圏や北米でシェアを拡大する際も、三井物産の海外調達力や国際ネットワークが活用されたとみられる。 こうした資本や業務面での連携が、セブン-イレブンを「三井系」と位置付ける理由となっている。