熱闘甲子園プロデューサー塩浜さん「努力・葛藤伝えたい」
熱闘甲子園プロデューサー塩浜さん「努力・葛藤伝えたい」 THE PAGE大阪
1915年に第1回大会が行われ、今年で100年となる全国高校野球選手権大会。今年も暑い中、阪神甲子園球場では全国各地から集まった球児たちによる熱線が繰り広げられている。その様子を35年にわたって伝えている番組がある。ABC朝日放送(大阪市)の「熱闘甲子園」だ。脈々と引き継がれる熱闘魂が受け継ぎ、今回から同番組プロデューサーとなった同局の塩浜昭男さん(42)に番組にかける思いを聞いてみた。
どのようにして、あの感動シーンが撮れるのか
「できる限り、球児の裏側などを描いていきたいですね。もちろんヒーローも注目しますが、それを支えてきた選手の親御さんやマネジャーとか、そういうところにスポットをあてたい。それが『熱闘』に通じるところがあるんです」と塩浜さん。取材の際は気をつけていることがいくつかあるという。 3年生にとっては最後の甲子園。迷惑にならないことを考えると、どこまで突っ込んでいいのか悩むことも多い。「聞くことによってヒントになることもありますが、球児にとっては、そこまで突っ込んだ話を聞くことで、逆に気にさせてしまったらどうしようとか。やっぱり彼らは『一瞬』にかけているわけなんで」 例えば、試合終了後、負けたチームは並々ならぬ思いでその後のミーティングを迎えるため、自分たちが踏み込んで取材するのは大変気を遣うという。監督や選手、マネジャーでがんばってきた空間。泣きながら抱き合ったりしているところに、彼らの絆が見える。 「本当はそこはクローズでやりたいところもあると思うんです。けど、そこを踏み込んでやらせてもらっている。やるということは、しっかりと感動や彼らの思いを大切にして伝えたい」。そうした思いを胸に、スタッフは取材に取り組んでいる。
毎年原点に戻れるという仕事はありがたい
もちろん、そんな場面はすぐに行ってパッと撮れるものではない。こうしたことができるのは、大会終了時からディレクターらが各高校を訪ね、1から新チームを立ち上げる場面から横でそっと見守っているという。「こういうのって言葉で言うたら『取材』ですけど、自然と選手や学校のみなさんと『絆』を作っていってるんですよね」 関係を築くことで、ディレクターの思いも大きくなり、純粋に応援。負けたら泣きじゃくるスタッフもおり、最後のミーティングの場にも一緒にいる。「ディレクターも一緒に戦ってきたよね」とみんなで分かち合えるからだという。 また「全部が取材じゃなくて、こちらが『最近どうなん?』と話しかけていくと、選手も自然と心を開いてくれたりします」。球児にとっては、そう大人と話す機会も多くないはず。そこで、ちょっと年代の近いスタッフなどには、相談ごとをしてきたりすることもあるとか。 スタッフは、ほぼ年中、球児のことを考えてすごしている。塩浜さん自身も、ラジオの部署にいたころから甲子園へ取材に行き、毎年必ず見ているようにしているのが、試合後の通路でのインタビューだった。「戦い終わった後の球児たちの目の輝き。いろんな人と会いますけど、あれに匹敵する目力というか、目の強さというか。あのギラギラした目の輝きというのは、毎年必ず見るようにしてるんです」 これを見ることで、自身も原点に戻れるという塩浜さん。自身も学生時代はずっと剣道をやっていた。小学校から始めて、高校最後の大会も思い出すという。「最後にかける思い」「オレはこのためにやってきたんだ」ということを思い出すと、自分もリセットできるという。「まあ毎年原点に戻れるという仕事、球児とふれあわせてもらっているのはありがたいことですね」