ペットボトルの賞味期限は気にしなくていい…理論上「絶対腐らない」ミネラルウォーターに賞味期限がある理由
防災用などで備蓄しているミネラルウォーターの賞味期限が切れたら、捨てたほうがいいのか。元消防士で防災アドバイザーの高岡武志さんは「捨てる必要はない。理論上、ミネラルウォーターは絶対に腐らないので、どれだけ賞味期限を過ぎていても、お腹を壊すことはない。賞味期限が設定されているのは『計量法』があるからだ」という――。 【この記事の画像を見る】 ■未開封であればペットボトル飲料は腐らない [ペットボトル飲料]と[肉や魚の缶詰]の共通点を知っていますか? 答えは「未開封であれば半永久的に腐らない」です。 驚かれる方が多いかもしれませんが、未開封であればペットボトル飲料は全く腐りません。理由は簡単で、ペットボトル飲料は「①無菌の部屋で、②無菌のボトルに、③無菌の飲料を詰めて、④菌が絶対侵入できない容器に入れている」からです。厚生労働省「清涼飲料水等の規格基準」で示されている通り、厳格な規格が設けられ、ペットボトル飲料はほとんどが加熱や濾過によって雑菌が取り除かれるのです。 食べ物・飲み物が「腐る」というのは、「悪い菌が有機物を分解する(その時に毒ができる)」という現象なので、菌を完全にゼロ(商業的無菌)の状態にしてしまえば、常温下では「どれだけあがいても腐れない」のは至極当然のことです。そしてペットボトル飲料はその状態を実現しています。 飲料メーカーはペットボトル飲料を「無菌充填」方式で生産するのが主流になっています。これは一般的に①無菌状態が保たれた装置(無菌ブース)の中に、②高温等で殺菌されたボトルとキャップを送り込み、③高温等により殺菌処理したドリンクを無菌ブースの中で充填して、④キャップですぐに「密封」するという方式です。そのため工場生産時に不備や事故が無い限りは、できたてのペットボトル飲料に菌が入り込む余地はありません。
■細菌やウイルスが中に入れない仕組み 講演などでこの話をすると、「生産時に無菌なのは分かったけど、出荷後の保管中にボトルの外側から悪い菌が入る可能性があるのでは?」という質問を受けることがあります。ですが結論から言えばその可能性もゼロです。外気中に漂っている菌がペットボトルの中に入り込む可能性はありません。これはペットボトルの容器が細菌やウイルスを絶対に通さない性質を持っているからです。 この性質を例えて言えば「蚊が網戸を通過できない」のと同じです。意外に聞こえるかもしれませんが、ペットボトル容器は「すき間が全く無い」から細菌やウイルスを通さないのではなく、「実はすき間はあるけれど」細菌やウイルスのほうが大きいから中に入れない仕組みなのです。 ペットボトル容器には通気性があると言われます。これはペットボトルの素材に使われているポリエチレンテレフタレート(PET)にはわずかに気体透過する性質があり、気体の分子となると通れてしまいます。これはペットボトルに限らずプラスチック素材全般に言えることで、ニンニク漬けの食材が入ったビニール袋からニンニクの匂いがしてくるのはそのためです。ニオイの粒子が目に見えない穴から出てしまっているわけです。 しかし、この穴はとても小さいため、サイズの大きなウイルスや細菌は通れません。飲み口部分の「密封」もキャップとボトルが完全に密着することで侵入できない状態が保たれています。 ■なぜ「腐らない」のに賞味期限があるのか 以上のことから、「絶対に菌が入れない容器に、無菌の飲料が入っているんだから当然、腐らない」という理屈が完成しました。そうなるとここで、大きな疑問が湧いてくるはずです。それは「腐らないのにどうして賞味期限があるのか? 一体何の期限なのか?」という疑問です。 ミネラルウォーターであれば一般的に2年、お茶やジュース類は6カ月~1年程度が賞味期限として設定されていますが、「腐らない」のであれば砂糖や塩のように賞味期限が設定されていない商品にできるはずです。それなのになぜ賞味期限があるのか。実はその答えは、先ほどお伝えした「ペットボトル容器には通気性がある」と関係しています。 まずミネラルウォーターの賞味期限ですが、これは「穴のせいで中身の水が徐々に減る」ことを考慮して設定されています。実は水の分子は、ボトルにあいた超極小サイズの穴よりも小さいため、非常にゆっくりですがボトルを通過してしまうのです。そうなると当然、徐々に中身が減っていくことになりますが、実は量が減り過ぎると販売時に法律違反になるという事情があるため、そうなる前の日付になるように賞味期限が設定されているのです。 この法律は「計量法」というもので、例えば2Lペットボトルであれば1%(20ml)、500mlペットボトルであれば2%(10ml)以上減ったものを販売してはならないというものです。