「3秒筋トレ」でシニアでも2カ月半で30%筋力アップ?基本の「椅子座り」と「かかと下ろし」のやり方を紹介
2種目で体の3分の2の筋肉を鍛える
では、どのようなトレーニングをすればいいのだろうか。 「シニアでも30%も筋力がアップするなんて、どんなにハードなんだろう…」と思った人は、拍子抜けするかもしれない。 基本の2種は、「椅子座り」と「かかと下ろし」。 「椅子座り」は、どの家庭にでもある椅子に、3秒間かけてゆっくりていねいに腰を下ろす。 「かかと下ろし」は、椅子の背もたれに手を添えて、3秒間かけてゆっくりていねいにかかとを下ろす。 たったこれだけ。この2種目を1日10回、1~2日おきに週3回以上行い、2カ月半(10週間)続けることを目標にしたい。 「椅子座り」では太ももの前の大腿四頭筋と太ももの後ろのハムストリングス、お尻の大殿筋が鍛えられる。「かかと下ろし」では、ふくらはぎの下腿三頭筋が鍛えられる。 これらのトレーニングで、全身の筋肉の約3分の2にあたる足腰の筋肉がまるごと強化され、膝や股関節の痛みの軽減も期待できる。 なおポイントは、「3秒間」かけて「ゆっくりていねいに」動作を行うこと。カウントはストップウォッチを使うほど厳密でなくてよい。 ただし頭の中で「1・2・3」とカウントする場合、実際の3秒より短くなってしまいがちなので、「1・2・3・4・5」とカウントしながら動作を行うとちょうどいいという。
なぜ3秒で効くのか
しかし、本当にこれだけでちゃんと鍛えられるのだろうか。そんな疑問をぶつけると、中村さんは「ゆっくり下ろす動作」にポイントがあると教えてくれた。 「実際に高齢者の方にこのトレーニングをやってもらうと、『ゆっくり下ろす』動きができずに、カクン、カクンとした動きになってしまいます。 『上げる運動』よりも『下ろす運動』、つまりブレーキをかける運動のほうが、実は難しい。この動きを3秒間集中して行うことでトレーニング効果を最大限に引き出すことを狙うのが私の提唱する『3秒筋トレ』なのです」 中村さんは2022年、学生たちに「ひじを曲げる(上げる)」「曲げたひじを伸ばす(下ろす)」「ひじは動かさず、力を入れるだけ」の動作を1日3秒間、週5日、4週間やってもらうという実験を行った。その結果、「曲げたひじを伸ばす(下ろす)」のグループだけ筋力が上がったという。 この結果から生まれたのが、「3秒筋トレ」だ。 今年6月に発売された中村さんの著書『世界最短時間で10歳若返る 3秒筋トレ』(講談社)には、紹介した2種を含めた10種のトレーニング方法と、筋トレの理論や疑問などが掲載されている。 中村さんが指導する体操教室に通う60~80代の参加者も、10週間(2カ月半)、「3秒筋トレ」を行って、筋肉量をはじめ、歩くスピードや握力などがアップしたという。メニューは、椅子座り、かかと下ろし、片ひじ伸ばし、片膝下ろし、お腹伸ばしが中心。 「私が『3秒』にこだわるのは、なるべく筋トレのハードルを下げたいからです。筋トレは、続けることが大切。フォームや回数など難しいことを考えすぎると、続けることが難しくなってしまいます。まずはご自分の出来る範囲で『3秒筋トレ』を生活の中に取り入れてみてください」 中村雅俊 西九州大学リハビリテーション学部 准教授/理学療法士。新潟医療福祉大学時に行った「3秒筋トレ」の効果についての国際論文を2023年に発表。「ニューヨーク・タイムズ」で取り上げられて話題になる。フィジカルトレーニングに関する精力的な研究により、ストレッチに関する論文数は世界ランキング1位(2023年)。その傍ら、リハビリのプロとして一般の方々のケアにもあたる。 イラスト=さいとうひさし
プライムオンライン特集班