神戸の会社員が自転車で南極点へ 仕事と両立で夢叶えたい
神戸の会社員が自転車で南極点へ 仕事と両立で夢叶えたい THEPAGE大阪
僕は冒険家じゃない、サラリーマンです──。神戸市須磨区に住む会社員の大島義史さん(31)が、24日から自転車で南極大陸を走り、南極点を目指す冒険に挑戦する。大学時代から自転車の旅に魅せられ、今回は個人で挑むわけだが「家族や会社が理解してくれてこそできる」という感謝の思いを胸に、家庭のことや仕事をこなしながらコツコツと準備をすすめてきたという。出発を目前に控えた大島さんの自宅を訪ね、現在の心境を聞いてみた。
会社では経理を担当、自宅にはたくさんの参考書も
神戸市須磨区のJR須磨駅で待ち合わせをしていると、半そで姿の青年が自転車でやってきた。もうこの時点で、顔を知らなくとも大島さんと分かる。この日の同市内の最高気温は12度、しかも海辺だったが「ようこそ来て頂きました、今日は暖かいですから」と笑顔で話し、自宅まで案内してくれた。 大島さんは、輸送機器メーカー「川崎重工業」(本社・神戸市)で経理を担当。これまでも不動産部門や工場の管理部門、国際税務など、様々な分野を担当している。「ウチはものづくりの会社なので技術屋さんが神業的感覚やテクニックで頑張っている。僕らはそこから価値あるものを生み出すことをサポートする部署なのでヘマは許されません。命がけで仕事してます」 その言葉を裏付けるかのように、自宅の本棚にもそれに関する参考書がたくさん並んでおり、かなり勉強家な一面も垣間見られる。
学生時代から自転車の旅に魅せられる
そんな大島さんだが、なぜ南極点を目指すのか?そのルーツは遺跡だった。高校時代に遺跡が好きが講じて、自転車でめぐることをはじめた。そして、後に東京大学文学部に入学し考古学を専攻。自転車旅の範囲は年を追うごとに国内から世界へと広がっていき、北極海からアメリカ、オーストラリアの砂漠、シルクロードではタクラマカン砂漠を走るなどした。 そして、大学生の時に住んでいた東京都板橋区の図書館で、世界初の北・南両極単独歩行横断を果たした大場満郎さんの書籍を見て、南極の真っ白に広がる地平線にポツリ立って写る大場さんを見て、かなり影響されていたという。後に大場さんには、南極の話を聞きにいったという。 その後、会社員となり南極の夢はあきらめていたが、神戸市内の図書館で見た書籍に載っていた「民間人でも南極に行ける」という一文を見て、その可能性を探ってみたくなった。 また、今を思えば妻のひと言も影響した。会社員になっても、1週間という期間で自転車世界旅を繰り返し、2012年に大学時代から続けてきた自転車旅の距離が、とうとう北極海からオーストラリア南端へ到達。「『これで世界縦断を達成したぞ』と言ったら、妻が『世界縦断だったら南極点じゃないですか?』と言ったんです(笑)。同時にそうか、とも思いました」 後に南極行きを相談すると、妻は「本当に行くんですか?」という反応で、多少けんかもした。そして、生活のこと、仕事のことも考えなければならない。会社とも、この点はじっくり話し合ったという。 そして、もちろん妻とも相談。話し合ううちに、自分が将来もらえるお小遣いの範囲、子供の大学までの学費などすべてひっくるめた生活設計を算出し「家族の生活に影響を与えない」計画を立てて示し、ゴーサインが出た。とはいえ「南極から帰ったら生き地獄が待ってますけどね」と苦笑しながら話す。