どんなに働いても「なぜか生きづらい」その真因…現代人を生きづらくさせる「スモール・トラウマ」
自信に溢れ、仕事を完璧にこなし、まさに絶好調、という人をあなたは知っているかもしれません。けれども、彼らも自信のなさに苦しめられているはずです。自信満々に見えるのは、自分を偽っているのがばれるのを恐れているからなのです。これはあなたのことかもしれません。 実を言えば、私たちの多くはそう感じているのですが、怖くて口に出せないのです。そのことがしばしばスモール・トラウマになります。あなたがインポスター症候群でなくても、あなたが知っている誰かは、その症候群になっていて、「ばれる」のを恐れているはずです。
■社会に由来するスモール・トラウマ 仕事に関する問題は、スモール・トラウマのより広範でよりマクロな源泉、すなわち現代社会へと私たちを導きます。現代社会には素晴らしい側面がたくさんあり、心身の健康状態という点でも、2、300年前の世界に戻りたいとは誰も思わないはずです。それでも現代社会にはスモール・トラウマの原因になる要素が溢れています。 私たちはグローバル経済の中で暮らしていて、その経済は多くの人の生活水準を押し上げましたが、その反面、自分と比較する相手が数百万人どころか、数十億人になりました。圧倒されるように感じるでしょうし、それも当然です。
「~ができたら、きっと幸せになれる」──この考えが何度、あなたの頭に浮かんだことでしょう。もう少しお金があったら、昇進したら、完璧なパートナーを見つけたら、子どもができたら……願望は限りなく続きます。 これを私は「奮闘の輪」と名づけました。私たちは成果や目標を目指して仕事に励み、奮闘し、振り返る時間をほとんど取ろうとしません。しかし実際には、ハムスターのように奮闘の輪を回しているだけなのです。休息も終わりもなく、ひたすら消耗するだけです。「いつか」ではなく、今を重視しなければ、この状態は永遠に続きます。
目標は重要ではないと言うつもりはありません。そうではなく、「もう少しがんばって働いて、お金を儲け、恋人ができたら、すべてを手に入れることができて幸せになれる」という誤解が蔓延している、と私は言いたいのです。現代の消費社会は絶えず耳元でサブリミナル的にこの約束をささやきます。 人間の価値を富や所有物や地位によって測ろうとする社会の破壊的性質について語るのは、私が最初ではないし、 もちろん最後でもないでしょう。また、この文化を変えることはできないでしょう。けれども、それが私たちの考え方や自信にどう影響し、どのようにスモール・トラウマを引き起こしているかに気づくことはできるはずです。