地方都市でこそジャズ 40周年迎えた仙台のサックス奏者
仙台在住のジャズ音楽家、安田智彦さん(58)=サックス奏者=がプロデビュー40周年を迎えました。ジャズ発祥の地、米国ではなく日本で、東京ではなく地方で、ジャズ音楽に取り組んできた人ならではの日々を振り返ってもらいました。
安田さんは時代小説家、藤沢周平と同郷の山形県鶴岡市出身。5歳年上の兄の影響を受け、小学校低学年でサックスを吹きはじめました。1976年(昭和51年)、19歳で仙台に移り、プロとして活動を始めました。26歳のときに1年だけ東京で演奏活動をしたほかは、仙台を活動拠点にしてきました。 「俺は田舎者。仙台でうまい空気を吸って、うまいものを食べて好きなジャズをやれたらこんなに素晴らしいことはない」 初めて自分のバンドを持ったのも仙台でした。30歳。その4年後、1991年に「定禅寺ストリートジャズフェスティバル(ジャズフェス)」が始まりました。ジャズフェスはことしが26回目。仙台の秋の音楽イベントとして全国に知られるようになっています。安田さんもジャズフェスの運営に深くかかわりましたが、10年でジャズフェスを卒業し、2001年には、新たにジャズ音楽に特化した音楽祭「仙台ジャズプロムナード(ジャズプロ)」を始めました。市民参加的な趣の強い「ジャズフェス」に対して、ジャズの魅力や演奏水準をより重視した内容を目指しています。 「ジャズプロ」は今年が16回目。7月2、3の両日、開かれます。安田さんは、カンパ箱を首からぶら下げてサックスを吹きながら会場を回ります。ジャズプロではおなじみの光景です。 多くのステージで演奏する一方、安田さんは後進の指導にも力を入れてきました。これまでに安田さんの指導を受けた人は500人ほど。現在でも、安田さん自身が創設した「仙台ジャズスクール」で音楽指導を続けています。「仙台ジャズスクール」の前身は、安田さんの名前を冠したスクールでしたが、途中で屋号を変更しました。 「『安田ミュージックスクール』のままでは、仮に俺が死んだら、なくなってしまうけれど、仙台・・なら、既に多くの人に教えている後輩たちが、ずっと続けられるはずです」 ジャズは米国発祥の音楽です。米国にモデルのある音楽を日本で演奏する人たちは、音楽表現に独創性をいかに盛り込むかで苦労してきました。近年は、優秀で感性も優れた若いプレイヤーたちが数多く育っているとはいえ、依然として、ニューヨークはジャズの本場で、地方都市よりも東京、という空気がないわけではありません。