「もう一回、フルで戦いたい」 身体の変化と眠れぬ育児から/宮里美香インタビュー(後編)
結婚と出産を機に、競技の世界からフェードアウトする女性アスリートは少なくない。しかし、「けがとかしていたら『やめよう』となっていたかもしれないけど、やめる理由にはならなかった。あまりゴルフに対しての悩みもなくて。だから、やめようにもやめられなかった」と振り返る。 2018年までプレーした米ツアー時代に「モチベーションを一回落とした」としながらも気持ちを奮い起こし、初めて本格参戦した日本ツアー。19年に賞金ランキング34位に入ってシードを獲得し、「いざ2年目」と臨んだ20年は新型コロナウイルスが大流行。次々と試合が中止となり、21年シーズンとの統合という事態に見舞われた。
同シーズンはメルセデスランキング50位に入り、辛くもシードを確保した翌22年。宮里は、5月「ブリヂストンレディス」の出場を最後に産休に入った。「3シーズン目という時に妊娠が分かって。もう一回、ちゃんとフルでワンシーズンを戦ってみたいという気持ちになった」と回顧する。 2つ年上でレーシングドライバーの夫・中山友貴さんが同じアスリートであったことも、復帰へ前向きになれた理由だったという。「ジャンルは全然違うけど、デビュー年が同じでプロ歴は一緒。ほかのスポーツ選手に会うこと自体が刺激になるけど、向こうは命が関わるスポーツ。彼との出会いは私にとって本当に刺激が強くて、こういう世界があるんだってめっちゃ勉強しました。私は楽にやっていたかも、もっと真剣にやった方がいいのかなとも(笑)」
ゴルフと育児 両立できるかはこれから
今年に入って5日間のタイ合宿を行った。「息子とこんなに長く離れたのは初めて。泣くかなと思ったんですけど、大丈夫でした。まだ1歳だからというのもあるのかな。離れても問題はなさそうという予行練習はできた」。共働きを選択する上で、切り離せない問題にも向き合う必要がある。 「お互いに週末は試合という時もあるので、お母さんに預けたりもして。両立できるかはこれから始まる。どうなるかはちょっと分からないけど、それも楽しみにやらないと」。育児と仕事、不安がないわけではない。 「うまい具合に子どもの成長は見たい。(育児を)やりながら違う将来のビジョンも見えてくるかもしれない。解説とか、去年はプレー以外のゴルフの仕事をさせてもらう機会があった。そういう風にシフトしていかないといけないのかも、と思うときはあるけど、復帰するって決めたからには自分のゴルフがどこまで通用するかをもう一回見たい」