韓国国会が史上最悪の「泥仕合」に、野党の“特検法”乱打で尹錫悦政権が崖っぷち
これに対し、今度はパク・ジョンフン大佐が国防部の前で記者会見を開き、「捜査に大統領室の外圧があった」と主張、国防部関係者などを公捜処(高位公職者不正捜査処)に告発したのだった。 それ以降は公捜処が捜査を進めているが、民主党はこの事件に関し早くから特検を要求し、李鍾燮長官の弾劾も主張していた。これを受けて李鍾燮長官は昨年9月に辞任を表明したが、最終的には尹錫悦大統領により更迭された。 ■ 尹大統領が直接関与か 騒動にはまだ続きがある。 今年3月、公捜処の捜査対象者となっている李鍾燮・前国防部長官がオーストラリア大使に任命されて出国すると、これが「大統領室が核心被疑者を逃がそうとしている」との印象を国民に与えてしまった。それがちょうど総選挙の直前だったため、与党にとって致命的なほどのダメージになりかねなかった。そこで李鍾燮氏は急遽帰国、またも辞任を表明するはめになったが、選挙戦での与党への逆風を和らげる効果はほとんど生まなかった。 与党への世論の反発はもちろん現在も続いたままだ。 「海兵隊兵士殉職事件特別検事法」の捜査対象には国防部をはじめ、大統領室、外交部、法務部まで含まれている。特検候補の推薦は、民主党が1人、国会の非交渉団体が1人を推薦することになっているが、最も多くの議席数を持つ祖国革新党が候補を推薦する確率が非常に高い。現在、共に民主党は、この特権法を尹大統領弾劾のトリガーにしようと動いている。また国会多数党にもかかわらず、国会外で場外集会を続けるなど、メディアの注目度を高めるために全力を尽くしている。 それに加え、最近になった新たな事実も判明した。海兵隊捜査団が国防部に捜査結果を報告した当日、尹大統領と李国防部長官とが数回も電話通話をした事実が明らかになったのだ。これにより「なぜ師団長まで処罰するのかと尹大統領が激怒した」というパク・ジョンフン大佐の主張が説得力を増してきている。 野党と『ハンギョレ』などの進歩系メディアは、「捜査外圧の主体は大統領室ではなく大統領だ」と主張し、この事件を「大統領の職権乱用事件」として追及する構えだ。 尹大統領と与党「国民の力」は、公捜処の捜査が終わるまで見守る立場だが、世論は特検法の導入に賛成する声が多い。それゆえ、「国民の力」議員の中でも、安哲秀(アン・チョルス)議員をはじめ、非尹派(尹大統領派閥ではないグループ)の中からも特検法に賛成する議員が次々と現れはじめている。尹大統領が拒否権を行使しても、再表決で国民の力の議員のうち10人以上が賛成票を投じれば、特検法案は国会を通過してしまい、尹大統領としては非常に困惑な状況となる。