根附海龍「世界ではまだアマチュア。トップスケーターになりたい」
練習せずにランの45秒2本、これに集中しようと思った
世界選手権初日の予選。ベストトリックは行われず、ラン2本で勝敗を決する。そして、ここで根附は大きなアクシデントに見舞われる。 「予選の2本目で足首を痛めてしまったんです。1本目でいい点が出たんで、2本目をやらなくても準々決勝に進めたんですが、やってしまって。もともと右足首には痛みがあったのですが、もう本当に明日からスケボーできないと思うぐらいの痛みになって、かなり大変でしたね」 準決勝には痛み止めの薬を飲み、強行出場。しかし、そこですばらしいランを展開する。全選手の中でトップの得点を叩き出したのである。 「不安はありました。ランの技も足首をそんなに使わないモノに変えて。練習時間も45分あったのですが、痛いのであんまり滑らないようにして、本番の45秒2本だけに集中して乗れるように、がんばりました」 準決勝も痛みに耐えて、決勝へとコマを進める。ここで、根附は「いつか世界大会の決勝でやりたかった」という大技を、完璧に成功させる。僅差で優勝こそ叶わなかったが、彼は試合後に首に掛かった銀メダルを見て「重いです」と笑顔で語った。 「他のメダルとは違いますね。こんな大きな大会で表彰台に立ったのは初めて。自信にはなりました。この世界選手権で、自分の技が評価されて、世界に通用するということがわかった。 オリンピックでも、自分のできることを全部やればメダルを狙えると思います。そのときに、いつもと同じ状態でいられたらですが」 さらに根附には大きな夢がある。それが世界のトップスケーターになること。叶えば世界が変わる。本場アメリカに自宅を持って、外国人選手たちと切磋琢磨できるようになるし、パークというスケートボードの練習場を持つこともできるだろう。 「うん。パークは作りたいですね。ただ、今は日本ではプロだけど、世界ではアマチュア。世界で認められたブランドから、自分の名前が入った板を出したいんです。それでようやく世界的なプロってことになるので、これはけっこうデカイこと。 そのためには、もっと練習して大会で勝っていくことが大事だし、それだけでなく街で滑っている動画を配信したりして、世界で有名なトップスケーターになりたいんですよね」
プロフィール
ねつけ・かいり/2003年生まれ。170cm、56kg、体脂肪率10%。7歳でスケートボードを始め、多くの大会に出場。19年、アマチュア最高峰の大会Tampa AMで優勝。22年、JAPAN STREET LEAGUE優勝。23年、JAPAN STREET LEAGUE準優勝。X- GAMES Chiba5位。世界選手権準優勝。
取材・文/鈴木一朗(初出『Tarzan』No.874・2024年2月22日発売)