さよなら「ゾエ」! ルノーのEV先駆者を振り返る 後継は「5」 楽しい走りで電費は優秀
最近の電動SUVより優秀な電費 モダンな車内環境
とはいえバックアップとして、内燃エンジンで走るクルマも1台あった方が安心。充電器の設置環境がわからない、遠くの目的地へ向かう場合も心配が減る。年間での出番は数回かもしれないが、維持費は節約したガソリン代でまかなえる。 そんなアーリーアダプターによる、進化途上のバッテリーEVとの付き合い方を、ゾエは一般化した。実際、セカンドカーとして家庭に普及していった。ところが、実際に所有してみると、ファーストカーとして活躍することも多かったはず。 今回、筆者がしばらくお借りしたゾエは、最寄り駅やショッピングモールまで、元気に走ってくれた。家族や親戚を迎えに行き、送り届けた。少なくとも走行時は、ゼロエミッションで。 不用品を詰めた大量のダンボールを積んで、リサイクルショップにも行った。生活の一部といえた、自宅から100km弱離れた目的地までの往復にも、問題なく使えた。 生産終了間際のゾエは、装備がアップデートされていた。ヘッドライトはLEDで、オートワイパーにオートロックが標準。スマートフォンと連携する、インフォテインメント・システムも装備され、車内環境は至ってモダンだった。 電費は6.4km/kWh。最近の電動SUVより、高効率なことも証明してみせた。
別れが寂しい 運転の楽しい小さなEV
そして、運転が楽しかった。乗り心地は柔らかく、適度に減衰力が効き、古き良きフランス車へ通じる味わい。ロータリー交差点を素早く回っても、大きくボディロールしたり、タイヤが鳴いてアンダーステアへ転じることはなかった。 最高出力は110psでも、最大トルクは22.9kg-mと太く、加速力は鋭い。MT車のようにクラッチペダルを踏んで減速する手間なく、AT車のようにキックダウンを待つことなく、アクセルオンでさっそうと加速する。滑らかで静か、高効率だ。 価格の高い上級ブランドのクルマでも、実際に運転してみたら期待外れということは少なくない。生産終了を迎えても、なんとも思わないモデルも多い。しかしゾエは、お別れが寂しい。筆者の家族も、英国編集部の多くも、そう感じているようだ。 ゾエを返却する日、筆者の家族は玄関口で手を振って、別れを惜しんだ。自宅の前を出発し、少し進んだところで、悔やまれる気持ちになった。ルノーのCEOへ、本当にこの決断は正しかったのか聞いてみたいと考えた。 もちろん、それはナンセンスだ。もし問うなら、数年前であるべきだった。後継モデルの計画は、3年以上前に知られていた。もしかすると、ゾエの正当な2代目の計画も、存在したのかもしれない。筆者へ強く響く、小さなバッテリーEVだった。
ルノー・ゾエ R110 ZE50(英国仕様)のスペック
英国価格:-ポンド 全長:4087mm 全幅:1730mm 全高:1592mm 最高速度:135km/h 0-100km/h加速:11.4秒 航続距離:384km 電費:7.2km/kWh CO2排出量:- 車両重量:1520kg パワートレイン:永久磁石同期モーター バッテリー:51.5kWh(実容量) 急速充電能力:-kW 最高出力:110ps 最大トルク:22.9kg-m ギアボックス:1速リダクション(前輪駆動)
スティーブ・クロプリー(執筆) ジョン・ブラッドショー(撮影) 中嶋健治(翻訳)