「そんなわかりきった一般論はいらない!」 なぜ今ロジカルシンキングのアップデートが必要か
そうしてチームからは、たとえばProductの視点から「ユーザーインタフェースを改良する」、Priceの視点から「初回の診断は無料にして利用者を誘致する」、Placeの視点から「企業と協業してその従業員に使っていただく」、Promotionの視点から「SNSマーケティングを強化する」といった提言が、中間報告のプレゼンの場でなされた。 それを聞いたクライアントから、第一声が発せられる。 「そんなわかりきった一般論はいらない」
その瞬間、ミーティングの空気が凍りついた。さらに、次の言葉が続く。 「4Pでも何でも、そのようなフレームワークは我々でも知っている。そんな周知の枠組みを使っているから、提言の内容が月並みなものになってしまう。我々が聞きたいのは、そのような一般論ではない。結局自分たちの事業に何が効くのか。その独自の考え、新鮮な洞察が欲しいのだ」 新人コンサルタントを鍛え上げる研修の場として、あえてこのような厳しい言葉を伝えた部分もあるだろう。しかし、それは僕にとっても紛れもなくショッキングなメッセージだった。
かつて有効とされた考え方が、価値を生み出すどころか、アウトプットを陳腐化させてしまっている。 その現実が、目の前にあった。 ■問題はどこに? 問題は、どこにあったのだろうか。少し視線を引いて俯瞰的に考えてみよう。 そもそも「考える」ということは、ざっくり言って「①インプット(情報収集)→②プロセス(情報処理・分析)→③アウトプット(思考成果の提示)」という流れで構成される。 料理でいうところの「①材料調達→②調理→③提供」の流れをイメージすればわかりやすい。
このうち、いかに情報をうまく分析し、そこから意味のある洞察を取り出すかという「プロセス」の部分は、まさしく経営コンサルタントが強みとする部分だ。 だが今回のケースでショッキングだったのは、この強みの核心であるはずの「プロセス」、つまりは考え方が陳腐だと言われたことだ。 4Pのフレームワークは昔から知られたもので、ある種の古典ともいえる。 しかし文学とは違って、ビジネスの現場において古典は価値あるものとして尊ばれず、代わり映えのない汎用品として扱われるようになってしまった。