「103万円の壁」見直しで正規雇用からパートへの転向組が激増中!?
「塾代や今後の学費、住宅ローンを考えると夫の給料だけでは厳しいので、自分も正社員として頑張ってきました。でも、日々の時間に余裕がなく、40歳を過ぎてからは体調不良の時も増えてきました。 そのため、自宅近くでパートタイムがいいとずっと思っていましたが、やはり『103万円』がネックで...。なので、『103万円の壁』を破ってくれたら正社員を辞めて、パートで月12~13万円ぐらい稼げたらいいと思っています」(坂東さん) ■日雇いアプリも後押し 一方、一足先に正社員を辞め、パートタイムに軸足を移したのが、川崎市在住で39歳の平地佐紀さん(仮名)だ。小学1年の女児と会社員の夫と3人暮らしの共稼ぎ世帯だったが、坂東さんと同様、時間的なゆとりがないフルタイムでの働き方に限界を感じ、いまは駅ビルにあるスーパーで週3日は固定、それ以外はスポットワーク仲介アプリの「タイミー」を使って働いている。 「最近はどこも時給が高くなって、103万円のボーダーラインには結構すぐに到達しちゃいます。そこで、固定のパート先での勤務時間をある程度抑えて、あとはタイミーを使って自分にとって都合のいい日時、場所、時給を自由に選び、103万円になるかならないかの調整をしています。上限を上げてくれるのはもちろん歓迎です。そしたら、タイミーでのアルバイトをもっと増やそうかなって思っています」(平地さん) 世間一般で共働き世帯は増えているようなイメージだが、厚生労働白書(2024年版)によると、1985年から2021年で妻がフルタイム労働者(週35時間以上就業)の世帯数は400万~500万世帯と横ばいだ。増えているのは、妻がパートタイム労働者(週35時間未満就業)の世帯数で、約200万世帯から約700万世帯の3.5倍になっている。 「103万円の壁」の見直しは、こうしたパートタイム労働者をさらに増やし、正規雇用の拡大を目指すこれまでの政策に逆行する可能性もある。しかしそれは同時に、働き方の多様化の促進と捉えることもできそうだ。 文/山本優希 写真/ 玉木雄一郎氏Xアカウント photo-ac.com