「常人では発想不可能…!?」『名探偵コナン』圧巻だった「スケールでかすぎ」のトリック
■巨大天狗が一瞬で消失!?「紅の修学旅行」
続いては、94~95巻収録の「紅の修学旅行」で起こった事件のトリックだ。この事件では、ホテルの一室の天井に巨大な天狗が現れて、それがタバコの火によって一瞬で消え去ってしまった。 犯人にはたくさんの人たちの前でそれを見せることで、自分が被害者のように思わせる狙いがあった。しかし、そのトリックも新一の手で解き明かされる結果となった。 実は天井に現れた巨大な天狗は、手品などで使われているフラッシュペーパーで作られた造形品だった。フラッシュペーパーは火をつけると一瞬で燃えて消えてしまう。その特性を活かしたのだろう。かなり大掛かりなトリックだ……。 作中に出てきた天狗はかなり巨大だったから、ひとりで準備するのは相当の時間と労力がかかったのではないだろうか。さらに一瞬の出来事だったとはいえ、見た者に「本当に天狗がいた!?」と思わせる完成度に仕上げているところもスゴい。 大量のフラッシュペーパーを用意するだけでも大変そうだし、生半可な犯人では起こせなかった事件だといえるだろう……。
■部屋を満水にして遺体を吊るす…「霧天狗伝説殺人事件」
最後は、コミックス11巻収録の「霧天狗伝説殺人事件」で使用されたトリックを見ていこう。この事件は、修行の間と呼ばれる、山寺の中にある独房のような部屋の梁に遺体が吊るされることで始まる。あまりにも高い場所に人をぶらさげるのが困難なために、古の魔物「霧天狗」の仕業ではないか……そんな風に思われてしまう。 しかし、実際は犯人がゴムボートに遺体を乗せてから、部屋の中を山寺脇に流れている滝の水で満たし、梁の近くまで上がって遺体を吊り下げていた。そして天窓から外に出て、斧で小窓に亀裂を入れて水を排出することでトリックの完成となる。 近くにある滝の水を流し込んで、自らが浮上して梁に近づくという考えはかなり斬新だった。水なら痕跡が残りづらい上に、このような方法で滝が利用されるなど考えもつかない。 しかもコナンが部屋の大きさを見て、水の量と掛かる圧力を細かく解説していたから、少し勉強にもなった。 今回紹介したトリックはかなりスケールが大きく、現実的にはありえないものばかりだ。しかし、よく考えられたトリックなので、実験的な意味でワクワクさせられてしまう。今後も作中でどんなトリックが出てくるのか非常に楽しみだ。
大山元