ヘッジファンド「虎の穴」、花形トレーダー量産-人材育成の錬金術か
シタデル傘下サーベイヤー・キャピタルの責任者フィリップ・リー氏は、一介のアナリストに過ぎなかったが、10年足らずで幾つかある株式部門のトップに昇進した。バリアズニーの「アンセムスキーム」が育成したセバスチアン・ドボー氏(パートナー)ら14人のポートフォリオマネジャーは、いずれも同社のベストパフォーマーだ。
シタデルでは、研修生は食物連鎖下位の同僚からの売り込みにいかに協力するか教わる。バリアズニーでは、研修生は限られた資金を元手にベテランに匹敵あるいは勝るリターンを残さなければならない。
ポイント72は、幹部候補生に最高経営責任者(CEO)のように考えることを要求する。チームから全面的に賛同を得ながらアイデアを考案し、実行する必要がある。あらゆる動きがモニター・分析され、不可欠な資質を持つか確かめるためデータが精査される。
最終的には数億ドルを託せるかという一つの問いに集約される。
シタデルのパブロ・サラーメ共同CIOは「必要性は明らかだ。業界最大の足かせとなっている制約の一つが人材確保だ」とインタビューで訴えた。
過去数年のヘッジファンド最大手の激しい人材獲得競争が、衝突や訴訟、報復の応酬を招き、少なくとも1社が破綻した。資産急増に採用ペースが追い付かず、業界の将来の成長を脅かしている。トレーダーへの支払いに充てるため、1ドルのもうけのうち60セントを手元に残す会社もあるほどだ。
これまで以上に惜しみない報酬で外部の人材を招き入れることは、持続不可能に思われ、磨かれざる宝石ともいえる人材を社内に求めることが、一つの選択肢ではなく必須となりつつある。
何十人ものトレーダーが複数のチームで資金を運用する大規模な「マルチストラテジーファンド」運営会社に人員不足が深刻な制約を課している。シタデルとミレニアム・マネジメント、ポイント72、バリアズニーは、ファンドへの旺盛な需要にもかかわらず、新たな資金の受け入れを停止した。シタデルはさらに踏み込み、2017年以降に250億ドルを顧客に返還した。これは過去13年間の業界への純資金流入総額の半分に相当する。