ヘッジファンド「虎の穴」、花形トレーダー量産-人材育成の錬金術か
(ブルームバーグ): ヘッジファンド業界の巨人、資産家のスティーブン・コーエン氏は10年余り前、自ら創業したファンド運営会社SACキャピタル・アドバイザーズの忙しいトレーディングフロアで、部下のポートフォリオマネジャー、ハリー・シュベーフェル氏と肩を寄せ合い座っていた。
シュベーフェル氏は、思いがけない幸運の連続がいかにSACで成功の力になったか思い巡らしていた。しかし、「もはや運に左右されるべきでない」とコーエン氏は反応した。
その啓示が結実した成果を彼は今享受している。コーエン氏の言葉を借りれば、「9点」と評価されるような人材を「10点満点」に磨き上げる手法で、ヘッジファンド業界で草分けともいえる最高の人材育成ラインを構築した。
ベルトコンベヤー式に量産された成績優秀な高度人材は、インサイダー取引事件で閉鎖に追い込まれたSACの再興を助け、同社を前身とするポイント72アセット・マネジメントは、340億ドル(約5兆4000億円)の顧客資金を誇る一大帝国となった。
コーエン氏とポイント72で共同最高投資責任者(CIO)に昇格したシュベーフェル氏は、ヘッジファンド業界のブートキャンプを設立した先駆者だが、それは彼らだけの動きではない。
ケネス・グリフィン氏のファンド運営会社シタデルやバリアズニー・アセット・マネジメント、他の業界大手も厳しいトレーニングレジームを考案した。有望なアナリストという地金を毎年5000万ドルから1億ドルの利益をもたらし得るポートフォリオマネジャーという金に変える一種の「人材錬金術」だ。
優秀な人材の量産ラインは成果を挙げているようだ。コーエン氏の元にいるストックピッカー(銘柄選択者)の過半数が、そのプログラム出身。最初の卒業生は今もコーエン氏のためにトレードを行っている。インターンも月1万9200ドルを得るシタデルでは、トレーダーの育成は、スタッフがより長く会社にとどまり出世も早いことを意味している。