「30センチ必要なのに厚さたった3センチ」南海トラフ地震でう回路のトンネル工事やり直し なぜ起きた?現場所長の誤った認識と目視のみの確認…2年かけたのにやり直し
和歌山県南部に建設中のトンネルで、天井部分のコンクリートの厚さが足りず空洞になっていた問題。工事は前代未聞の『やり直し』の事態に。南海トラフ地震など災害時のう回路として地元の人に活用されるはずだったトンネルで一体何が起きているのでしょうか。 【画像を見る】穴の向こうに空洞が見える トンネル内部と現地の様子 和歌山県の串本町と那智勝浦町の町境をつなぐ県道のトンネル「八郎山トンネル」。全長711mで「南海トラフ地震」などの災害時には、海沿いの国道42号のう回道路として、重要な意味合いを持つものとして、整備中でした。トンネルはおととし9月に完成し、去年12月から供用開始の予定でした。
きっかけは照明工事 穴をあけたらコンクリ貫通
問題が発覚したのはおととし12月。照明の設置工事で、作業員が設置しようと、アンカー用の穴をあけたところ、コンクリートを貫通して内部に空洞があることがわかったということです。 県の調査によりますと、空洞などの施工不良は少なくとも約8割の範囲に及んでいたということで、本来の設計なら、コンクリートの厚さは30センチ必要なのに、最も薄いところで、わずか1/10の「3センチ」しかありませんでした。 県の担当者は発覚直後、「現場の管理がされていないことに正直に驚きを隠せない。非常に遺憾」だと話していました。
工事は県内の業者が担当「検査で薄いこと認識していた」のに数値改ざん
トンネル工事は和歌山市にある「淺川組」と田辺市の「堀組」の共同事業体が実施していました。 和歌山県によりますと、浅川組は完成後、「覆工コンクリートの厚さは設計以上に確保されていた」という内容の書類を提出したということです。しかし、県の聞き取りに対して、「検査で薄いことは把握していた」と回答したといい、書類を設計値以上に書き換えつまり改ざんしたことを認めたということです。 県は「業者が適切な対応を怠り、厚さが不足するような粗雑な工事を行った」と指摘し、2業者に対し、6か月の入札参加資格停止の措置をとりました。
業者はなぜこんなずさん工事を?現場所長の『誤った認識』
そんな中、県が問題公表してから約半年後の1月17日にようやく施工会社の「浅川組」が会見を行い問題の経緯について説明が行われました。 会社側は問題発覚後に社内に社外取締役の弁護士を委員長とするコンプライアンス委員会が設けられ従業員らへのヒアリングを実施、今回のトンネル工事を担当した現場所長はこれまでに17件ものトンネル工事を担当し、社内でも経験豊富で「トンネル工事」と言えばこの人と称される“敏腕社員だった”ということです。 会見では委員会が作成した提言書も公表。その中で所長はヒアリングに対して、「覆工コンクリートの厚さが確保できないことを認識しながら、本社に相談することなく工事を進め、数値を偽装して検査を通した」と回答したということです。