中国から東南アジアへ工場移転加速か、トランプ氏の対中関税に備え
Devjyot Ghoshal Chayut Setboonsarng [バンコク 8日 ロイター] - 米大統領選の期間中から、中国から東南アジアへの工場移転が続いていた。共和党候補トランプ前大統領が勝利した場合に中国からの輸入製品に高額の関税が適用される事態をにらんだ動きだが、トランプ氏の返り咲きが決まった今、こうした移転が加速するとみられている。 トランプ氏は次期大統領就任後、米国に輸入される中国製品に60%と、1期目の政権時に発動した7.5─25%よりずっと高い関税を課すと約束している。 自動車や電子機器などの工場が集まるタイ、マレーシア、ベトナムといった東南アジア諸国は、この関税政策の恩恵を受ける公算が大きい、というのが企業関係者や法律専門家などの見方だ。 タイの事業用不動産開発大手WHAグループのジャレエポーン・ハルコーンサクル最高経営責任者(CEO)によると、米大統領選でトランプ陣営の勢いが強まるとともに中国の顧客から問い合わせの電話が殺到した。2017─21年のトランプ前政権時代、既に東南アジアへの工場移転は起きていたものの、これからより本格化するだろうという。 ジャレエポーン氏は、WHAがタイとベトナムに展開する広さ1万2000ヘクタール強の工業団地を管理運営する部門でセールス要員と中国語ができる人材を拡充しつつあると明かした。 タイの別の事業用不動産大手アマタが運営する工業団地に今年開設された90の工場のうち、およそ3分の2は中国から移転してきた企業だった、と創業者で会長のビクロム・クロマディトは話す。 ビクロム氏は、トランプ氏返り咲きは中国にとって「大打撃」で、同社が東南アジア4カ国で運営する広さ150平方キロの工業団地に中国から移転を検討している企業は倍増する可能性があると見込んでいる。 同氏は、アマタが今月になってラオスの工業団地建設も開始したと述べた。ラオスは首都ビエンチャンと中国南部を結ぶ高速鉄道が既に開通している。 東南アジアの自動車産業の拠点となっているタイの電気自動車(EV)業界には、中国の自動車メーカーからこれまで14億ドルの資金が投じられた。 タイのピチャイ商務相は「中国からの多額の投資を、われわれが米国に輸出できるような形にしていきたい、これは実現すると信じている。米国民も中国国民もわれわれを愛しており、われわれはどちら側かを選ぶ必要はない」と記者団に語った。 マレーシアでも企業団体の指導者が、半導体セクターに1000億ドルの新規投資を呼び込み、世界的なサプライチェーン(供給網)再編の動きの追い風を受けられると期待を示した。 同国製造業連盟を率いるソー・ティアン・ライ氏は「この再編でマレーシアは米国やその他重要市場向け輸出シェアを拡大する新たなチャンスを得られるだろう」と話した。