【ご近況全文】上皇さま90歳 過去の出会い大切に穏やかにお過ごし(宮内庁公表)
上皇さまは23日、90歳、卒寿の誕生日を迎えられました。過去の出会いを大切にして、上皇后さまと規則正しく静かに穏やかにお過ごしだという上皇さま。皇居の生物学研究所などで魚類の研究を続け、アフガニスタンなど過去に訪問した国の現況を専門家から説明を受けられることもあったということです。 侍従とオセロや将棋を楽しまれることもあるという日常やご体調など、宮内庁上皇職が公開した上皇さまの近況について、全文を紹介します。(表記は宮内庁表記のままです)
【上皇陛下のご近況について(お誕生日に際し)上皇職】
上皇陛下は、今年、90歳のお誕生日をお迎えになります。 上皇后さまと毎日を規則正しく静かに穏やかにお過ごしです。 朝夕の新聞やテレビニュースをよくご覧になり、国内外の出来事に目を向けられながら、国民生活の様子に心を配られています。今年5月から感染症法上の位置づけが変更された新型コロナウイルスの感染状況と社会対応の変化に注目される一方、世界的に異常気象が発生していることを気に留められ、梅雨から夏にかけ全国各地で発生した線状降水帯による大雨被害や今夏の記録的な高温による熱中症患者の増加や農作物への影響について案じていらっしゃいました。地震が発生すると、いつものように昼夜を問わず、すぐにテレビの速報をご覧になって被災状況を確認されています。
沖縄県慰霊の日、広島・長崎原爆の日、終戦記念日並びに阪神淡路大震災及び東日本大震災の発生日には、上皇后さまとご一緒に黙祷され、終日を静かにお過ごしになっていますが、沖縄や戦争と平和への思いは今もお強く、今年2月にお訪ねになったJICA横浜海外移住資料館の「沖縄移民の歴史と世界のウチナーンチュの絆」展や平和祈念展示資料館で開催された企画展「収容所(ラーゲリ)と日本を結んだ葉書」では、説明者に熱心にご質問になり、興味深くご覧になりました。上皇后さまとのお話の中でも、琉歌や琉球舞踊など沖縄の文化や歴史、沖縄のハンセン病療養所等をご訪問になった思い出と共に、ご疎開中の日光や終戦直後の東京都小金井市の東宮御仮寓所でのご生活、軽井沢大日向を開墾した満蒙開拓団の人々のことなどがよく話題になっています。 また、御在位中にお見舞になった東日本大震災を始めとする被災地のその後の様子をいつも心に留められ、取り分け、原発事故による放射能汚染により未だ帰還困難者がいる福島県の状況を案じていらっしゃいます。東日本大震災との関連で付言すれば、陛下が被災者をお見舞いになって詠まれた御製「大いなるまがのいたみに耐へて生くる人の言葉に心打たるる」、上皇后さまが復興に立ち向かう被災者を思われた御歌「今ひとたび立ちあがりゆく村むらよ失(う)せたるものの面影の上(へ)に」を歌詞とする祭祀舞が創作され、今年、宮城県石巻市にある神社の東日本大震災物故者慰霊祭で奉奏されたとの知らせを受けました。 新聞記事やニュースで話題になった国や地域については、ご訪問当時の様子やお会いになった人々のことを上皇后さまとよく話題にされています。天皇皇后両陛下を始め秋篠宮皇嗣同妃両殿下や皇族方が外国をご訪問になる折は、無事のお務めとご帰国を願われつつ、その国をご訪問になった当時のことを懐かしく思い起こされていらっしゃいます。これまでのご訪問国の中には、社会情勢が当時と一変しているところもあり、時に外部の識者からそうした国の現況について説明を受けられたこともありました。外国元首の中には、個人的なご交誼から、今でも季節の挨拶状や書状を送ってこられる方が多くあります。 陛下は、過去の出会い、一期一会を大切になさっていらっしゃいます。