『光る君へ』道長役・柄本佑インタビュー。「最高権力者になっても、人間性は変わらない」
ベースにあるのは「まひろとの約束」と直秀の死
―今後の道長は、まひろとの約束を果たすことと、兼家の「政とは家だ」という考えの狭間で悩むこともあるのでしょうか。 柄本:やっている印象としては、その狭間で悩むという感じではないです。言っていることには疑問を持っていたと思いますが、親父の言ったことにはとてつもない覚悟となりふり構わない行ないがあった。そのシーンには台本にト書きがあって、「共感しないが、圧倒される」と書かれていました。 あくまでベースにあるのは、まひろとの約束事と、直秀のことではないかなと思います。自分の愚かしい行動のせいで直秀が亡くなってしまったということがやはりすごく大きくあるのではないかと思います。 ―『光る君へ』は非常に注目度が高く、SNSなどでも論評が繰り広げられていますが、道長の人物像について、どう感じられていますか? 柄本:最初の打ち合わせのときに、いま存在する道長像ではない新たな道長像を描きたいと伺いました。大石(静)さんが書かれる台本には非常に強度を感じていて、道長とはこういう人だという説得力があるので、僕としてはそこを100%信頼して、この本に描かれる道長像をやるということを考えています。物語や人物像についていろいろな意見があるということは、僕はいいことで、素敵なことだと思います。 道長はもっと露骨だったのではないかというところでいうと、この作品において、道長は非常に地に足のついたところから出発していると思います。 彰子の入内屏風にさまざまな公卿(くぎょう)たちの歌を飾って、そこに花山院の和歌も加えたということは、相当えげつないことらしいんです。道長は、もともとは自分の家族を政には関わらせたくなかったけれど、(安倍)晴明や姉にあなたも血を流すべきだと言われて、そうするしかなくなった。けれど本人はただ娘の彰子に幸せになってほしいと思っている。そういった地に足のついた思いが、結局外からはえぐいことをやっているように見える。 とにかく家族の幸せとまひろとの約束を果たすために邁進していて、非常にまっすぐな人だと思っています。