婚姻数は急減中…20代・30代の男女に聞いて分かった少子化の本当の原因
広く地球環境の悪化も、生活に身近な環境破壊も、人口の増加が原因であって、長い目で見るかぎり人口の減少は、人類が生き永らえるために朗報だといえる。ところが、少子化は現在、少子化が社会の存続を脅かすほどの問題と化している。理由は、それがあまりにも急速に進むあまり、高齢者が増えるのに対して勤労世代が激減し、社会基盤を支えられなくなるからである。 【写真】「子どもに外食させて親は自炊」 世帯年収1000万円はもはや「勝ち組」ではない
昨年、日本で生まれた外国人をふくむ子供の数は、厚生労働省が発表した速報値で75万8,631人。前年より4万1,097人、率にして5.1%減少した。2016年に97万7,242人と、統計を取りはじめた1899年以来、はじめて100万人を下回り、社会を震撼させた。だが、それからわずか7年で、出生数はその4分の3余りになった。 国立社会保障・人口問題研究所が2017年に予測した「日本の将来推計人口」では、出生数が80万人割れになるのは2033年とされていたが、10年も前倒しになってしまった。そこでは、70万人割れは2046年、60万人割れは2058年と推計されているが、予測がかなり甘かったことは、もはや疑いの余地がない。 それを裏づけるのは婚姻数の急減である。昨年は48万9,281組と、戦後はじめて50万組の大台を割った。日本は諸外国とくらべても結婚と出産が直結しているので、今後、出生数が減少するスピードに、さらなる拍車がかかる可能性がある。 こうしたデータは若い世代、すなわち20代から30代前半の男女と話していると、彼らの意識によって裏づけられていると強く感じる。私はしばらく前から、若い世代と接する際に、結婚や出産に対する意識を聞き出すように努めてきたので、その結果を記してみたい。
結婚や出産で「自分を犠牲にしたくない」
結婚し、子供をもうけるということに消極的になる声として、若い男性から聞こえてくるのは、以下のような声が多かった。「年齢を重ねても給料が上がる保証がないので、結婚したり、子供をもったりして出費が増えることにリスクを感じる」「これだけ物価が上がっているのに、家庭を持って生活をさらに切りつめることに躊躇がある」「家族よりも自分の時間を大切にしたい」。その結果、ひとりですごすことに不安はないか、と尋ねると、周囲に同様の人が多いからあまり感じないという。 一方、女性はどうだろうか。男性と同じような回答もあるが、そこに別種のものも加わった。「職場でせっかくキャリアを重ねても、産休から戻ったときに、同じ職場やポジションに戻れる保証がない」「子育てをするのは、女性にこそすごく負担がかかる」「子供や家庭のために自分の好きなことを犠牲にしたくない」「そもそも出産や子育ては女性に負担がかかりすぎる」。 これらの回答からどういう傾向を導きだせるか、すなわち、若い男女が結婚し、子供をもうけることに、どのようなリスクを感じていると考えられるか、生の言葉への解釈も交えて以下に列挙してみたい。 日本経済が長期にわたって低迷し、給料が上がらず、今後も上がるという保証はないので、結婚に踏み切れない。 主に円安に起因する昨今の物価高による生活苦が、結婚や出産への足かせになっている。 いまの若者は子どものころから「無理はする必要がない」「自分らしく生きればいい」と教わっているから、結婚や出産によって自分の時間が奪われることに躊躇がある。また、結婚によって生じる苦労を、あえて引き受ける必要性を感じない。 加えて女性の場合は――。 男女平等が強く意識される社会になったにもかかわらず、出産や育児は女性にばかり負担がかかりがちだ。 働いている企業や団体で産休や育休が整備されても、子供が生まれても休まなくて済む男性にくらべると、休まなければ出産できない女性は、キャリアを築くうえで不利だ。