第76回エミー賞 『SHOGUN 将軍』『一流シェフ』などディズニー作品が輝き放つ
15日(現地時間)に、アメリカのテレビ・配信業界の最高の権威である第76回プライムタイム・エミー賞(通称エミー賞)の授賞式が、ロサンゼルスで華やかに開催された。中でも輝いていたのは、合計60の賞を受賞したウォルト・ディズニー・カンパニー。注目を集めていた『SHOGUN 将軍』はドラマシリーズ部門の作品賞、主演男優賞(真田広之)、主演女優賞(アンナ・サワイ)などの主要部門を含む、エミー賞最多の18冠を達成するという歴史的快挙を成し遂げた。 【写真】今年のエミー賞で輝いていたディズニープラス作品一覧 エミー賞は、音楽、映画、演劇の分野における優れた功績を讃えるグラミー賞、アカデミー賞、トニー賞に並ぶ、エンターテインメントにおいて最高峰に位置づけられているアワードの筆頭。世界のショービジネスの中心地であるアメリカの最大のアワードの受賞結果が、世界各国に与える影響には絶大なものがある。 その栄えある賞の頂点を極め、歴史を塗り替えたのが、日本人俳優とスタッフが数多く参加し、セリフの約7割が日本語である本格的な日本の時代劇『SHOGUN 将軍』であることは、今後の世界のエンターテインメント業界のトレンドを左右する大きな意味を持つだろう。 主演とプロデューサー務める真田広之は、それぞれ英語で受賞スピーチを行ったが、作品賞のスピーチでは、あえて日本語で時代劇への強い思いと日本の先人たちへの感謝を述べ、日本の時代劇が国境を越えたことを高らかに伝えて拍手喝采を浴びた。 そしてアンナ・サワイは日本人かつアジア系俳優として初めて主演女優賞を獲得。西洋と東洋の文化が出会う『SHOGUN 将軍』の物語と同じく、その舞台裏である現場ではハリウッドと日本の才能が互いの異なる文化に敬意を払い、尊重しながら一つの傑作を作り上げる過程だった。こうした姿勢もまたディズニーが長年取り組んできた、今の時代に必要な多様性と包括性を象徴するものと言える。このような作品を世に送り出す英断を下し、製作を手がけたFXプロダクションは、ディズニーが持つ強力なコンテンツブランドやスタジオの代表格だ。 ディズニーが持つFXプロダクションは、第76回エミー賞ではネットワーク別の受賞数ではNetflix、HBO/Maxをしのぐ36を記録して大躍進。コメディシリーズ部門では『一流シェフのファミリーレストラン』シーズン2が11冠を達成し、自作が持っていたシーズン1の記録を更新する形で新記録を樹立した。人生に行き詰まった人々が集まり、レストランを再建するというシンプルなストーリーラインでありながら、スタイリッシュな映像と見応えのある人間ドラマを描いて普遍的な感動を伝える秀作のシリーズ。2000年代以降、画期的な作品群で業界をリードしてきたFXプロダクションの卓越したセンスが光る。また今回、キャストのライザ・コロン=ザヤスは、ラテン系俳優として初の助演女優賞を受賞。 ほかにも、今年のエミー賞ではディズニーが持つ制作スタジオの健闘が際立った。3部門の受賞を果たした、ハリウッドの重鎮たちが豪華共演するミステリー・コメディ『マーダーズ・イン・ビルディング』シーズン3や、テレビ映画部門の作品賞を受賞したオークワフィナとサンドラ・オーのアジア系女性が主演を務めた『クイズ・レディー』は、ディズニー傘下のHulu/20世紀テレビジョンの人気作品。エミー賞常連の公立小学校を描いた秀作コメディ『アボット・エレメンタリー』シーズン3は、ディズニー傘下のABCネットワークの大ヒットシリーズだ。これらの製作を手がける20thテレビジョンや20世紀スタジオ、そして先に述べたFXプロダクションといった多彩なスタジオの存在が今年のエミー賞を多様な作品や出演者たちで彩った。 近年、各分野のこの手の授賞式は視聴率の低迷に悩まされており、前回の第75回エミー賞の授賞式は過去最低の視聴者数を記録。しかし、今年は前年比54%増で、コロナ禍以前より苦戦が続いていた授賞式の視聴率を好転させた。候補作も受賞結果も、文字通り多様性に富み、世界各国のスターが集結した今年のエミー賞。真田が度々語った「オーセンティックへのこだわり」の追求により業界に新風を巻き起こし、時代の変化を象徴する『SHOGUN 将軍』を筆頭に、エミー賞に輝く栄誉ある作品群は、ディズニー公式動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」で、世界同時配信で手軽に見ることができるのも魅力の1つだろう。今後のドラマシリーズにも期待したい。