最新BMW M5「ツーリング」 試作車へ先行試乗! 高速道路を重視 F10はアグレッシブ過ぎた?
少しアグレッシブ過ぎたF10型のM5
実際にステアリングホイールを握ってみると、どうしても道幅は狭く感じられてしまう。それでも乗り心地は見事。手強そうな路面でも、落ち着きを失わない。カーブを結ぶ短い直線を、無駄なくしなやかにこなしていく。 先代より、安定していることは間違いないだろう。長距離を快適に駆け抜けられた、E39型M5への回帰といえるレシピなのかもしれない。 「わたしたちは、弊社のクルマが持つ弱点を無視しません。F10型のM5 コンペティションは、少しアグレッシブ過ぎたと受け止めています。一部のお客様からも、そのような意見をいただきました」 「今回は、M5がサーキット用ではないという意識を強めています。日常的に乗られるクルマですから、ビジネスにも使われ、日常的な暮らしの道具にもなります。高速道路への適合性が、最も重要だと考えました」 と説明するハッカーは、これがプログレッシブレートのコイルスプリングを採用した理由だとも付け加える。摩擦で不利なエアスプリングを選ばないM部門は、硬いコイルスプリングを組むと、サスペンション・ストロークが短くなることへ対処したのだ。 現状では、100mmのストローク量が与えられている。ダンパーが充分に機能し、不整路面での乗り心地で大きなプラスになる。タイヤの接地性も高めることができる。
長距離前提のアウトバーン・ランナー
スノードニアには、垂直方向の姿勢制御が試される区間が点在する。M5 ツーリングは、それらを苦もなく通過してみせた。車重を感じるのは、リアアクスルへ重心が移動していく瞬間程度だ。 駆動用モーターがパワーを加算し、シフトダウンせずともグングン速度は上昇。グリップ力に優れ、トラクションも相当に高い。 ステアリングの反応は正確で、姿勢制御もタイト。サイズや車重は、想像より意識することはない。完全に打ち消されてはいないようだが。 第7世代のM5は、先代より進化したのか。少なくとも、F10型より前のM5が宿したような、動的特性が目指されたことは間違いなさそうだ。市場で最も敏捷なパフォーマンス・サルーン/ワゴンではなく、長距離を前提としたアウトバーン・ランナーとして。 「大きなスーパーGTスタイルのMモデルを、ラインナップする意味はあると考えています。現在のM3のオーナーの多くは、数世代前のM5へ通じるダイナミックさや、サイズ感を味わっているでしょう。対してM2は、M3やM4より小さく機敏で若々しい」 「新しいM5は新鮮でありながら、大きく実用的。より成熟された味わいを提供できるはずです」 直近の3年間で、軸となるモデルが新世代へ入れ替わっただけでなく、アプローチも改められた様子。M5 ツーリングの量産仕様への試乗は、2024年後半が予定されている。先代以上に、巧妙な仕上がりを得るのではないだろうか。 ◯:車重にも関わらず滑らかで落ち着いた乗り心地 駆動用モーターがトルクを加算し速く扱いやすい Mならではといえる四輪駆動と後輪駆動の構成 △:状況では大きすぎるボディ 2.5tの車重は隠しきれない 従来のM5以上に大人な雰囲気で興奮は減ったかも
BMW M5 ツーリング(プロトタイプ/欧州仕様)のスペック
英国価格:11万2500ポンド(約2137万円) 全長:5096mm 全幅:1970mm 全高:1516mm 最高速度:305km/h(Mドライバーズパッケージ) 0-100km/h加速:3.5秒 燃費:-km/L CO2排出量:-g/km 車両重量:-kg パワートレイン:V型8気筒4395cc ツイン・ターボチャージャー+電気モーター 使用燃料:ガソリン 駆動用バッテリー:18.6kWh 最高出力:725ps/5600-6500rpm(システム総合) 最大トルク:-kg-m/ ギアボックス:8速オートマティック(四輪駆動)
マット・ソーンダース(執筆) 中嶋健治(翻訳)