〝いい古墳あります〟 樹木葬や散骨に続く新しい「墓」のカタチ
古墳墓の販売企業に話を聞いてみた
ここからは、「古墳の窓口」の運営会社であり、古墳墓の提案・販売している前方後円墳の代表取締役・竹田恒泰(つねやす)氏に伺ったお話をご紹介します。 【株式会社前方後円墳】 2024年4月創業。古墳型墓や神道式樹木葬の企画・設計・販売を行うスタートアップ企業。同年8月に古墳墓の予約や購入ができるサービス「古墳の窓口」をリリース。 ――古墳を「樹木葬」とする発想のきっかけは何だったのでしょうか?サービス立ち上げの背景について教えてください。 私の父方のお墓は古墳で、小さいときから墓参りで古墳に手を合わせ、葬儀なども神式に親しんできました。母方は仏式の一般墓で、葬儀も仏式です。そのため、神式と仏式の両方があることは、自然なことでした。 父が三男であるため、他に古墳型墓を築造しようとしましたが、難航しておりました。霊園や石材店とやりとりをしていたところ、友人たちが古墳型墓に興味を示すようになり、「そのような墓が造れるなら造りたい」という声が寄せられるようになりました。それが、古墳墓を造ることになったきっかけです。 昨年新規に販売された墓所の52%が樹木葬墓だったという報道を見かけ、古墳型の樹木葬墓があったら良いと思うようになりました。古墳型の墓は全国に数か所ありますが、いずれも形を模倣しただけで、古墳とはいえない代物でした。 そこで、古墳文化を再現した「本物の古墳」を造ろうと、株式会社前方後円墳を立ち上げた次第です。 「樹木葬」とは、墓石を建てない一般的なお墓の形態で、様々なものがあります。墓石を建てないということであれば、もともと日本には古墳があります。それは日本式の樹木葬といってもいいのではないでしょうか。シンプルでありながら、凛とした佇まいの前方後円墳は、日本の美を体現したものといえるでしょう。 ――墓石や納骨堂、一般の樹木葬などと比べた古墳墓ならではの特徴と魅力を教えてください。 最大の特徴は「古墳に眠る」ということ、そのものだと思います。普通はお墓の話で盛り上がることなどありませんが、私が古墳の話をすると、楽しみながら聞いてくれ、話が盛り上がることが多いので、そのように感じています。 その上で、重要な特徴について述べます。 (1)永代にわたり神社が祭祀を行う 私たちが築造する古墳墓は、年に2度(春分の日と秋分の日)、地元の神社の神主による御霊祭(みたまさい)を行います。この祭典では、埋葬された方のお名前を毎回、奏上します。価格は通常の樹木葬と同程度ですが、古墳墓では丁寧な祭祀が行われ、手抜きがないといえるでしょう。その点も古墳墓の特徴です。 (2)承継者不在でも大丈夫(檀家義務もなし) 私たちが築造する古墳墓では、永代にわたる管理費・植栽維持費は、お申込時に一括してお支払いいただきますので、毎年のお支払いはありません。承継者が不在でも問題ありません。子や孫に墓の負担を負わせたくないという方にもぴったりです。 古墳墓は、利用者に代わって霊園が管理します。そして(1)でも述べたように、神社が祭祀を担います。 (3)最後は土にかえる 古墳墓には区画のある「永代祭祀墓」と、一つの区画に複数の御骨を納めていく「合祀墓」の2種類があります。前者は骨壺、後者は袋を用います。前者は永代期間の定めがあり、その期間を経過すると、同じ古墳の中にある「合祀墓」の方に遷座いたします。「合祀墓」の底面は土になっているので、長い時間をかけて、御骨は土にかえることになります。 近年は海洋散骨が人気なようですが、もっとも後悔する人が多いのも海洋散骨だそうです。海に御骨をまいてしまうと、永遠に漂い続けるのみで、決して土にかえることはありません。 ――お客さまからいただいたお声や、現地見学会の反響を教えてください。 現在販売中の古墳墓は千葉県と香川県にありますが、いずれも建設中で未完成です。にもかかわらず、多くの方が説明会や現地見学ツアーにご参加くださいました。 多くの方が関心してくださったのは、神社が古墳を守り、御霊を鎮めることです。永代にわたる管理費と祭祀の費用が、すでに諸費用の中に入っているということに驚く方もいらっしゃいました。「なんか死ぬのが楽しみになってきました」ということをおっしゃったお客さまが2人いらっしゃいます。
変わりゆく「墓」のカタチ
近年の墓事情と、樹木葬の進化系として話題の古墳墓についてご紹介しました。 「死後は先祖と同じ墓に入る」という常識が常識ではなくなっている近頃は、死後の身の振り方も自身で自由に決めるという考えが主流になってきました。それに伴い、供養の方法やサービスの形態も多様化しています。 残される家族はもちろん、何より自分自身のために、生前の自分が納得できる「墓」を探してみてはいかがでしょうか? 取材協力:株式会社前方後円墳 Web 「古墳の窓口」https://madoguchi.kofun.co.jp/ 取材・文/黒岩ヨシコ 編集/inox.
@DIME編集部