朝ドラ『虎に翼』主人公のモデル・三淵嘉子さんとはどのような人物だったのか?
NHK朝の連続テレビ小説『虎に翼』の第一週目が放送開始。伊藤沙莉さんが演じるヒロイン・猪爪寅子(いのつめともこ)のモデルとなったのが、まだまだ女性が社会で活躍するという時代ではなかった大正~昭和初期に女性初の弁護士、判事、そして家庭裁判所長となった三淵嘉子(みぶちよしこ)さんである。今回は嘉子さんの生い立ちをご紹介する。 ■ヒロインのモデルは柔軟な思想のもとで育った帰国子女だった! ドラマ冒頭では寅子が日本国憲法制定を伝える新聞を握りしめ、日本国憲法第14条第1項「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」という文言を噛みしめる姿が印象的だった。 では、モデルとなった三淵嘉子さんとはどのような人物だったのか。まずはその生い立ちを追ってみよう。三淵(旧姓武藤)嘉子さんは、第1次世界大戦が始まった大正3年(1914)11月13日にシンガポールで誕生した。父・武藤貞雄(むとうさだお)は台湾銀行に勤めており、その後ニューヨーク勤務を経て大正9年(1920)に帰国。以降、一家は揃って東京・渋谷に住んでいたそうだ。 そういえば、寅子のお見合い相手として貿易会社に勤めるニューヨーク帰りのエリート会社員、横田太一郎(よこたたいちろう/演:藤森慎吾)が登場した。彼の設定はそんな父の経歴に影響を受けているのかもしれない。作中では寅子に次々と縁談が持ち込まれており(しかもお相手は生まれも仕事も申し分なし)、猪爪家がそれなりに裕福で恵まれた環境で育ってきたことを窺わせる。 女学校の友人とは異なり、職業婦人となる道を模索している寅子だが、モデルである嘉子さんも早くから自立心を養われていたらしい。父親は「男性と同様に政治や経済を理解できるようになれ。そして何か専門の職に就くための勉強をしろ」と嘉子さんに説いていたという。 作中、お見合いの場面で父が「この子は毎朝私と一緒に新聞を読んでおりまして」と、国際情勢について自論を述べる寅子をフォローしたが、そこもやはりこの“史実ネタ”が効いている。 嘉子さんは昭和7年(1932)3月にお茶の水女子大学付属高等学校の前身である東京女子師範学校附属高等女学校を卒業した後、法律を学ぶことを決心する。今はまだ明確な目標がなく「ただ結婚して誰かの妻になる自分が想像できない」という寅子だが、ドラマではこの後どのように「法律」という目標に出会うのか、明日以降の放送に注目したい。 <参考> 明治大学史資料センター「三淵嘉子(みぶちよしこ)―NHKの連続テレビ小説(朝ドラ)の主人公のモデルとなった女子部出身の裁判官―(法曹編)」 神野潔『三淵嘉子 先駆者であり続けた女性法曹の物語』(日本能率協会マネジメントセンター)
歴史人編集部