アマン京都の新感覚茶会「茶香」の、シーシャのような“吸うお茶”でリラックスしてきた
アマン京都は2024年11月に開業5周年を迎えた。これを記念して、アマン京都がある京都・鷹峯三山(たかがみねさんざん)にちなんで「鷹峯茶会」が開かれた。アマン京都でしか味わえない新感覚の茶会を体験してきた。 【写真15点】アマン京都で開かれた「鷹峯茶会」の料理
2025年秋、新たに茶室も誕生予定
京都の紅葉がまさに見ごろを迎え、たくさんの観光客で賑わっているが、本来の京都らしい優雅な時が流れる場所がある。それが2024年11月に開業5周年を迎えた、アマン京都だ。敷地面積は約2万4,000㎡、自然林を有する総敷地面積は約32万㎡にもおよぶ。さぞ、京都の奥地かと思いきや、そんなことはなく、京都の北側、鷹峯(たかがみね)エリアに位置し、京都駅からクルマなら約30分で到着できる別世界だ。 金閣寺も徒歩圏内の鷹峯エリアは、約400年前の江戸時代初期に琳派(りんぱ)の創始者・本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)が居を構え、芸術村として繁栄していた。そんな歴史的な場所でもある、アマン京都の森の庭に一歩足を踏み入れると、街中の喧騒が嘘のように、赤や黄色に染まる美しき紅葉が目の前に広がり、樹々の間を風がそよぎ、優しくさざめく。思わず深呼吸したくなるほど、心地のよい自然に包まれる感覚に。2025年秋には新たに茶室も誕生する予定だという。この圧倒的な京都の自然を感じられる場所で、期間限定で開催された特別企画「鷹峯茶会」に参加した。 舞台はアマン京都の日本料理「鷹庵(たかあん)」。一枚板のカウンター席で秋の懐石料理を振る舞うのは、総料理長の髙木慎一朗氏だ。甘味はエグゼクティブペストリーシェフの松尾浩幸氏が趣向を凝らし、食後には京都を拠点とするアートコレクティブ、Ochill(オチル)による「茶香」の特別体験が用意されていた。
アマン京都の限定企画が見逃せない
柴田厚志総支配人が「歴史、自然、芸術、美食などが揃うこの京都で、“アマン京都らしい”サービスとは何か、この5年間ずっと考えてきました。その一つの答えとも言える『鷹峯茶会』をお楽しみください」と語る。それに続き、髙木総料理長は「コンセプトは何を食べているかわかること。京都にいながらにして、京料理ではないものも提供していきたい」と想いを口にして茶会がスタートした。 そもそも髙木総料理長は金沢の日本料理「銭屋」を営む父親のもとで育ち、大学卒業後、「京都吉兆」で修業、1996年に実家に戻り、2008年二代目主人に就任。2016年には「銭屋」をミシュラン2つ星レストランへと導いた手腕を持つ。さらに、各地のレストランやホテルから招聘され、国内外を飛び回る。ここアマン京都では、日本文化の真髄に触れる、新たな食体験を提供したいと考えているそう。その想いがちりばめられた料理構成に期待が膨らむ。 席に着くと、輪島塗の卓上盆の上には美しき陶器のオブジェが。金沢の陶芸家である中村卓夫氏の作品で一つとして同じものはないそう。ゲストを楽しませる粋なおもてなしだ。 アルコールかノンアルコールのペアリングが秋の味覚に花を添える。まず、心を射抜かれたのは、肌寒くなってきた季節にぴったりの海老芋の白味噌椀。かつおだしの旨味と白味噌のまろやかな甘味が絶妙な塩梅で、海老芋のねっとりした食感に悶絶。海老芋の上にあしらわれた、大根とにんじんの紅白結びの演出も心憎い。 京焼・乾山写色絵菊文向付に盛りつけられたお造りに続き、箸休めの鯖寿司に驚きの声が上がる。冒頭に鑑賞した陶器のオブジェに載せて提供された鯖寿司には、ブルーチーズのロックフォールが添えられ、焼き海苔に巻いていただくというもの。「発酵」という視点からの発想の組み合わせで、癖になる味わいだった。 続いて、やさしい胡麻の香りが口いっぱいに広がる、雲丹と銀杏が添えられた胡麻豆腐の揚げ出し、ふっくらとした身に旨味が閉じ込められた、のど黒幽庵杉板焼き、甘い脂の京都の平井牛、そして、ねっとりとした焚合の蓮蒸が。蓮根の甘みと出汁のやさしい味わいが身体に沁みいる。噛むごとにさまざまな食感が楽しめるのだが、ピータンも入っているという驚きも。食事の〆は、山わさびがアクセントのハラスご飯。圧倒的技術に裏打ちされた日本料理の真髄があるからこそ、さまざまな挑戦的試みが楽しめる感動的な構成だった。