’24政治決戦(2)旧統一教会問題の行方は
鈴木 エイト
衆院総選挙が終わった。自民党が苦戦したのは裏金問題のためと言われるが、私は別の見方をしている。旧統一教会問題が未解明であることの影響だ。元首相銃撃事件後も、自民党が過去の検証をおざなりにしたことへの不信と裏金問題の相乗効果ではなかったか。(文中敬称略)
教団の全面支援が失せた総選挙
投票日の4日前、10月23日に私が「文藝春秋」電子版に寄稿した「全公開『極秘 旧統一教会内部資料』2021年衆院選、旧統一教会に支援された自民候補者実名リスト」が公開された。 内部資料から、教団側が小選挙区で強くない自民党候補や、比例復活でぎりぎり当選ラインに届く同党候補に組織的な選挙応援を行ってきた実態を検証したものだ。今回の総選挙で当落線上の自民候補が軒並み落選し、比例復活も限られていたのは、旧統一教会が自民党候補者への全面支援から手を引いたことが響いたと推測される。 安倍晋三元首相への銃撃事件によって突如その蜜月関係が終わった旧統一教会と自民党だが、過去の歴史を紐解くと、第2次安倍政権が発足した後に関係性が強化されていったことが分かる。旧統一教会と自民党の関係の実際のところは完全な解明には至っておらず、新たな証拠や接点も発覚している。 旧統一教会が抱える社会問題、そして自民党との関係を歴史的に振り返っておこう。 1954年、韓国で教祖の文鮮明が「世界基督教統一神霊協会」の名で開いたこの教団は、朴正煕軍事政権の庇護の下で勢力を伸ばし、反共産主義を旗頭に「勝共運動」を展開する。日本進出は1959年。1968年に安倍の祖父である岸信介元首相らの後ろ盾で国際勝共連合を設立した。 だが1984年、天皇陛下役に扮した日本の幹部が文鮮明に敬拝する秘密儀式があることを教団系メディアの世界日報の元編集局長が暴露、多くの右翼団体が旧統一教会の反日性に気付き勝共連合を見限った。一方、政治家は秘書や選挙運動員などを派遣してくれる勝共連合を重宝し、中曽根康弘政権下の1986年衆参ダブル選挙で、文鮮明教祖は60億円を投入し、130人の勝共推進議員を当選させたと言われる。 ところが、霊感商法や合同結婚式、正体を隠した偽装伝道などが社会問題化し、保守派の政治家も距離を置くようになった。すると勝共連合は反ジェンダーの運動などを通して保守系政治家の再取り込みを図る。2016年には世界規模の国会議員連合組織を創設している。