スーパーGT、新予選方式については「見え方、見せ方」に課題を認識。車高変更による安全対策には様々な意見
富士スピードウェイでスーパーGT公式テストが行なわれた3月24日、プロモーターのGTアソシエイション(GTA)による囲み会見が実施。新予選方式や、安全対策に関する評価や意見交換が行なわれた。 【写真】スーパーGT富士公式テスト:フォトギャラリー 予選方式をはじめ、大きなレギュレーション変更があった今季のスーパーGT。GTAはこれらに対する説明の場を設けるべく、岡山テストの際には坂東正明代表、服部尚貴レースディレクター、そしてレース事業部の沢目拓部長が出席しての規則説明会が実施された。そして富士テストの際には、一連の模擬予選を終えてのGTA側の評価や、メディアとの質疑応答・意見交換の場が設けられた形だ。 スーパーGTでは今シーズンから、予選Q1、Q2、決勝スタートを同じタイヤで走ることを義務付けたことに伴い、予選方式をQ1、Q2のタイム合算方式とする。ふたりのドライバーが協力してポールポジションを目指すフォーマットとなり、新たな競技的要素も増えることには好意的な声も多く聞かれているが、その“分かりにくさ”を懸念する声が挙がっているのも確かだ。 沢目部長も「見え方、見せ方の問題については、まだまだだと思っています」として、引き続き公式中継のテロップ表示などで試行錯誤を続けていることを明かした。合算タイムでポールポジションが決まるということもあり、観戦する上で欲しい文字情報も必然的に増えるわけだが、ひとつの画面にあまりに文字情報を詰め込みすぎると、画面におけるテロップの割合が大きくなりすぎるというデメリットもある。この辺りは開幕が迫っているということもあり抜本的な変更は難しくとも、ファンや関係者からのフィードバックを参考にアップデートをしていきたいとの姿勢を示した。 服部レースディレクターもコントロールタワーからレース運営に関わる立場として、いくつか感じたことをフィードバックした。まず全体的には「見栄えとして決して悪くなかったんじゃないか」としつつ、レースコントロールから無線でチームに伝えているトラックリミット違反を、場内実況や中継陣にいかに素早く伝えてファンがリアルタイムで現状を把握できるようにするかは、考えていくべきだとした。 富士テストではウエットコンディションの中で模擬予選が行なわれたが、服部レースディレクターはQ2の8分間というセッション時間は、こうした状況下ではタイヤのウォームアップや各車の位置取りという点で厳しいように感じられたと言い、「そこは社内でも揉んでいかないといけない。8分だと色々な問題が出ることが見えたかな」と語った。 またウエット宣言が出された場合、Q1、Q2共に組み分けが行なわれるGT300クラスでは、タイム合算方式が採用されず、Q2のタイムで予選順位が決まる。Q1 A組は小雨、Q2 B組が本降りといったコンディションになった場合、タイム合算では組み分けによる明らかな有利不利が発生することを考えると、理に適ったルールと言える。例えばセッションの途中に雨が降り出した場合も、その時点で早急にウエット宣言が出され、合算ではなくQ2タイムによる順位決定に切り替えられるという。 これらについて坂東代表は「マニアやここにいる人間(関係者)だけじゃなくて、見ている人達により多く理解をしてもらわないと」として、ひとりでも多くの人に分かりやすく伝える必要性があると改めて語った。 ■GT500はスキッドブロック規制で速度抑制目指す。しかし技術開発との「追いかけっこ」に? そして話は安全対策に移った。GTAでは近年続いた重大事故を受けて、様々なアプローチから安全対策を検討してきた。その結果今シーズンからは、GT500では最低地上高の5mm増加、GT300では追加重量の設定によってコーナリングスピードの抑制を狙うことになった。 GT500に関しては、車体底面に取り付けられるスキッドブロックと呼ばれる板で最低地上高を管理しているが、この取り付け面とスキッドブロックの間にスペーサーが用いられることで、従来よりも5mm下にスキッドブロックが取り付けられる、とのことのようだ。これにより各チームは従来よりも車高を上げざるを得なくなり、それがひいてはダウンフォース減少、コーナリングスピード抑制に繋がるという考え方だ。 沢目部長によると、GT500の速度抑制における具体的なターゲットは、鈴鹿サーキットでラップタイムが0.7秒~1秒遅くなることだったという。そこに到達できるものとして今回の地上高変更が持ち上がり、1月のセパンテストで新たな地上高での走行を実施。GT500に参戦する3メーカーから効果が認められるとの報告を受けて、協議の上で正式決定されたという。 ただ、ドライバーからはあまり効果を感じられないという声も挙がっている。 STANLEY TEAM KUNIMITSUの山本尚貴は岡山で「結果的には今までとあまりラップタイムが変わらないので、スキッドブロックでの対策はうまく機能していないのかなという印象です。ルールの規制以上に開発スピードが速いこともあるでしょうし、スーパーGTは賢い人たちの集まりなので、以前のようなスピードに近づけようと各メーカーやっていると思いますから」とコメント。ARTAの大津弘樹も「車高が上がったなりに調整してピークを出すためにセッティングするので、自分たちも『全然タイム変わらないね』という話をしています。車高を上げる必要があったのかどうかという点は疑問ではあります」としている。 坂東代表も「これは技術屋との話になるので、車高5mmでどれだけタイムが変わるのかに関しては、風洞などでデータを収集し、それを基にタイヤ開発をしてくるメーカーやチームと常に追いかけっこの関係」だとコメント。その中で速度抑制の規則を作り上げるのは非常に難しい問題であることを認めた。 またGTAは、昨年より「タイヤワーキング」を設置してタイヤメーカーと様々な議論を行なっていると明かしていた。タイヤに関しても開発競争が行なわれているため、タイヤのアプローチで速度抑制を目指すのは簡単はことではないが、安全対策に関しては様々な話し合いが行なわれた様子だ。沢目部長も「メーカーさんの事情もあり、現段階では申し上げられることがなく申し訳ない」としながらも、進捗や発表できるものが出たタイミングでは開示していきたいと話した。
戎井健一郎
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