女の子の90年代は思い切りオーバーサイズで
メンズスタイルはバランス感覚がすべて
ディテールをとことん追求するメンズスタイルは、異性から見ても真似をしたくなるハイレベルな参考書。スタイリスト服部昌孝流のテクニックを指南します。 ●服部昌孝 はっとり・まさたか>> 2012年に独立。ファッション誌のほか、数多くの人気ミュージシャンをスタイリング。近年は、制作プロダクションとして映像をディレクションするなど多岐にわたって活躍。
自分がもっとも好きな90年代のスタイルはやっぱり外せません。スケーターカルチャーを匂わせる着こなしをベースに、ちょっとした不良のエッセンスや実用とデザインを兼ねた機能美をプラスして変化をつけています。女の子が着ることを意識して考えたのは、とにかくビッグシルエットであること。極端なぐらいのオーバーサイズを取り入れる方がバランス的には面白いですね。ボリューム感たっぷりの〈ディッキーズ〉のショーツなんかは、かなり使えるアイテムだと思います。定番ものだけで固めてノスタルジーになるのではなく、旬なメンズブランドをミックスすることが大切。古臭く見えたらアウトなので、個性はキープしつつもトレンドはしっかり押さえておきたいところ。合わせた〈ヘドメイナー〉のベストは斬新だと思います。
1. ヘアバンドは不良の証 「90年代の渋カジを象徴するスタイルとして、ロン毛にヘアバンドを合わせるのが流行ってましたよね。これはチーマーカルチャーからきたものですが、やっぱり男はいつの時代も不良ファッションに強く惹かれるもの。でも単純に女の子が、おでこを出すように浅くつけてたらかわいいと思います。ストリートブランドではなく、〈リック オウエンス〉のモード発信ってところもポイント高いです」 2. サングラスはセルフレームが新鮮 「これもメンズしか選ばないアイテムのひとつかも。女の子がセルフレームのサングラスをかけているイメージがないんですよね。目が透けちゃうほどのレンズとかが、抵抗あるのかもしれない。だけど、こういう子がいたら、男はみんな振り返っちゃうと思う。ヘアバンドとの相性もいいんですよ。ここはセットで考えたい。当時の若者を虜にしたロンドンブーツ1号2号がこんな合わせで、そのリバイバルです」 3. 90sタイポグラフィー 「インナーには〈カサブランカ〉のラグジュアリーなTシャツを差し込んでみました。色使いや3Dのタイポグラフィーがまさに90年代を彷彿とさせるプリントになっています。肉厚のヘヴィオンスで、ベストにも負けないこのオーバーサイズが、レイヤードした時に生きるんです。完全に自分の趣味ですが、“CASA RACING”のグラフィックがキテますね。ただ、全面に押し出すと主張が強いのでチラリと覗く程度で合わせたい」 4. 超ビッグシルエットで遊ぶ 「着る人の体を包み込むような極端なフォルムを得意とする〈ヘドメイナー〉と〈リーボック〉によるコラボラインから。メンズが着ても大きく見える超ビッグシルエットをあえて女の子が着ることで、さらにそのラインが引き立ってめちゃくちゃかわいいですよね。上品なショールカラーをミックスしていたり、大胆なポケット使いなど、男心を鷲づかみにするディテールが、レディスには新鮮に映るのでは?」 5. デカポケットの機能美 「男って無条件でポケットのデザインに反応しちゃうんですよね。しかもこんな大ぶりなタイプはなかなか見つからないし。女の子と違って、基本バッグを持たないで行動したがるので、物が収納できるポケットがたくさん付いているのはうれしいんですよ。そういう意味でもこのベストは、理想的。しかも、〈ポーター〉タンカーシリーズを思わせるミリタリー要素も加わり、メンズの好きが詰まった逸品」 6. ロールアップでアクセントを 「映画『アメリカン・グラフィティ』のポール・ル・マットや『スタンド・バイ・ミー』でリバー・フェニックスがTシャツの袖を捲って、その間にタバコを挟んでいたりするんですけど、そういう不良カルチャーに男は弱い。でも、男女問わず使える便利なテクニックで、いい具合に抜けが生まれる。程よい立体感がシンプルな夏のスタイルにアクセントにもなりますよね。折り返しの回数やピッチで雰囲気も変化するので、いろいろと試してみて」 7. メンズパールをラフに合わせる 「パールのアクセサリーを、ストリートでつける男性がめっちゃくちゃ増えましたよね。最近でもよく目にします。今回使っているのは、パリの気鋭ブランド〈カサブランカ〉で展開されている淡水パールのコンビブレスレットです。値ごろでカジュアルな印象だから買いやすいし、女性でも決してフォーマルな見え方にはならない。普段使いとして気軽に合わせられるのも利点かなと。こんなユニセックスなテンションが今の時代にはフィットするんじゃないでしょうか」 8.ビッグショーツに宿るスケーター魂 「スケーターのド定番と言える〈ディッキーズ〉の王道、膝下丈のショーツ。昔はこれをジーンズメイトでみんな買ってたんですよ。ウエスト自体はそんなに大きくないのに、腰の下あたりから急にドカッとしたシルエットになるのが特徴。合わせているのは34インチだけど、あえて36インチぐらいのオーバーサイズをベルトでキュッと閉めてはく。そんな女の子がいたら痺れちゃいますね」 9. 英国紳士の嗜みを足元に 「〈コーギー〉といえば、英国王室御用達の超老舗ニットメーカーで職人によるハンドメイドのソックスが有名。そんな伝統あるブランドに〈スイコック〉が別注したロングソックスは、メンズにしてラメを施している珍しい逸品。それをクシュっとさせて足元のアクセントにしています。このはき方は、90年代のオマージュで抜け感を作るのに最適。ソックス1枚にも強いこだわりを持って合わせたい」 10. サンダルも狙うはハイテクギア系 「スリッパ型のサンダルなのにこのハイテク感がやばいですね。LAのアートクリエイティブ集団〈ブレイン デッド〉と〈オークリー〉による実験的ブランド〈オークリーファクトリーチーム〉のもので、“ギア”に憧れる男たちの目線で選びました。きっと足元に明るい色を持っていきたくなると思いますが、ベストのカラーを拾ってトーンを締めているのもメンズらしい色合わせです」 ベスト ¥174,900(ヘドメイナー×リーボック | アディッション アデライデ)/Tシャツ ¥45,100(カサブランカ | ザ・ギャラリーボックス)/パンツ ¥6,600(ディッキーズ)/ヘアバンド ¥28,600(リックオウエンス・ダークシャドウ | ザ・ギャラリーボックス)/サングラス ¥34,100(ヌーングーン)、ベルト ¥17,600(アーネストダブルベーカー | 共にジャックポット)/ブレスレット ¥35,200(カサブランカ | ヌビアン渋谷)/ソックス ¥4,950(コーギ×スイコック | バックドア)/サンダル ¥15,400(ブレイン デッド × オークリーファクトリーチーム | ブレイン デッド ステュディオス)
GINZA