<コラム>サザンオールスターズ、「恋のブギウギナイト」の聴けば聴くほどクセになるイイ塩梅のグルーヴ
サザンオールスターズが46回目のデビュー記念日となる2024 年6月25日に配信リリースした「恋のブギウギナイト」を繰り返し聴いている。夏こそサザンの季節、とはいえ今年の夏は、毎日ものすごく暑い。あまりにも暑すぎて、激しいロックや強烈なビートの利いた音楽はちょっと敬遠したくなってしまう。その点、「恋のブギウギナイト」はノリが良いのに暑苦しさがないところがいい。絶妙な音圧で身体を揺らすビートが、じつに良い塩梅な聴き心地のダンスチューンだ。昭和のディスコ、平成のユーロビート、令和のEDMと時代を彩ってきたダンスミュージックを、デビュー46年の大ベテラン音楽集団・サザンならではの熟練のサウンドメイクで、レイヤーを重ねるように融合して瑞々しい最新曲に仕上げている。 「恋のブギウギナイト」というタイトルは、いにしえの洋楽ヒッツの邦題みたいなレトロ風。時代が変わり様々な音楽の進化はあれど、サザンのメンバーが育ってきたソウルミュージックへの変わらぬ愛着を感じさせて、なんだか微笑ましい。約1年前にリリースされた「盆ギリ恋歌」が和風の湿度高めな夏ソングなら、「恋のブギウギナイト」は洋風のドライなビートに日本の情緒をしっとりと纏わせた夏ソング。共に“恋”をタイトルに冠しながらも、まったく異なるテイストの世界観が楽しめる楽曲だが、共通点はやっぱりお色気ムード。〈チューブトップに欲情 もう心はSeventeen〉、〈ノリ良く エロく 大好きなタイプ〉といったほんのりセクシーな歌詞は安定のサザン節が健在だ。リリース時のオフィシャル・ウェブサイトで、「デビューした当初はナウでヤングな若者だった我々サザンですが、気がつけばメンバー全員古希目前(汗)※毛ガニは今年10月で70歳。」とコメントを発表していた桑田佳祐の、年輪を重ねても今なお尽きないティーンエイジャーのようなリビドーには、思いっきり感服せざるを得ない。 7月31日にはお待ちかねのミュージック・ビデオも公開された。ダンスフロアでトップスにジャージを羽織ったストリートファッションのメンバーたちの他、この曲が主題歌となっているフジテレビ系水10ドラマ『新宿野戦病院』で主演を務める小池栄子と仲野太賀も登場して、要所要所で存在感を発揮しているのも見どころ。ド派手なネオンフロア、異国情緒たっぷりでギラギラな電飾、ギターのカッティングに合わせてキレキレなブレイキンを見せるダンサー、エロティックなコスチュームのダンサー、能面や花魁姿の女性等々、混沌とした舞台設定と多様なキャラクターが登場するところはサザンのお家芸といえる。桑田はテクノバンド風にサングラスをかけてラップトップに向かっていたり、「いよぉ~!」と歌舞伎の掛け声を上げていたりカオスに輪をかけているわけだが、唐突に差し込まれる地味なサラリーマン姿に萌えたファンも多いはず。シンプルにイケおじな桑田さん、最高です。MVを繰り返し何度も観ることによって、曲も聴けば聴くほどクセになっているところは、完全にサザンの思うつぼ。これだけノリノリなサウンド、ド派手な映像をリピートしても胃もたれしない優しさでできているところが、「恋のブギウギナイト」の心地良さだ。 同曲に続いて、新曲「ジャンヌ・ダルクによろしく」が7月26日に開幕した【パリオリンピック2024】のTBS系スポーツ2024テーマ曲としてオンエアされている。こちらは歪んだギターリフ、スライドギターの音色が牽引する楽曲。桑田のブルージーな歌い回しもあり、サザンのルーツも垣間見える“王道”ロックチューンだ。今後は、最後の夏フェス参戦を宣言している【ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in HITACHINAKA】への出演(9月23日)、さらに冬には9年ぶり16枚目のオリジナル・アルバムのリリースが待っている。これからの期待と興奮に胸躍らせながら、サザンの最新曲と共に過ごす夏の喜びを、思う存分享受しようではないか。 Text by 岡本貴之 ◎リリース情報 「恋のブギウギナイト」 2024/6/25 DIGITAL RELEASE