BAND-MAIDが語る、世界を目指すバンド哲学と環境の変化
可愛らしいメイド姿でハードなロックを鳴らす5人組バンド、BAND-MAID。結成10周年を迎えた2023年には世界各地でツアーを敢行し、世界最大級のフェス「ロラパルーザ」を含む4つの大型海外フェスに出演。ツアーファイナルとして横浜アリーナでの単独公演を成功させ、10周年を締めくくった。そして活動12年目となる2024年、「新章開幕」とし9月25日に3年半ぶりとなるフルアルバム『Epic Narratives』をリリース。Incubusのマイク・アインジガーとのコライト楽曲、メキシコのスリーピースガールズバンドThe Warningとのコラボ楽曲など全14曲を収録した本作についてから、10年以上バンドを続ける5人の関係性まで、メンバーインタビューと個別インタビューで掘り下げていく。 【写真を見る】2023年、「ロラパルーザ・シカゴ」「Sonic Temple 2023」「POINTFEST 2023」などに出演したBAND-MAID ※この記事は現在発売中の「Rolling Stone Japan vol.28」に掲載されたものです。 ーBAND-MAIDは、活動初期から「世界征服」という目標を口にされています。僕が2016年のメジャーデビュータイミングで取材させていただいた際も口にされていましたが、実際のところ、当時どれくらい現実味を持ってお話されていたんでしょう? 小鳩ミク(Gt, Vo) あの頃は、まだ本当に海外に行き始めで。今は世界各地でツアーをしたり、いろいろなフェスに出させていただいたりしているので、そのときに言っていた世界征服と今では全然別物というか。当時は、夢のまた夢だったと思いますっぽ。 SAIKI(Vo) 当時は希望も込めて言霊になるように世界征服って言っている感じだったんですけど、10周年を迎えて、行ったことのないアメリカの地域も行きましたし、国の数も増えているので、自信を持って私たちの目標は世界征服ですって言えるようになりました。 ー活動当初から海外での注目度が高かった印象がありますが、ご本人たち的に逆輸入的に日本でも大きくなってきた実感はありますか? 小鳩 「ロラパルーザ・シカゴ」やフェスに出たニュースで知ってくださった方もなかにはいらっしゃるんですけど、私たちの感覚としては、日本も海外も同じようにお給仕(ライブ)を頑張って、徐々に増えていっているイメージの方が気持ちとしては大きいかなと思っていますっぽ。 KANAMI(Gt) 最初の頃、日本よりもメキシコ公演の方が大きい会場でびっくりしたよね。 SAIKI 集客もすごかったし、会場もやったことのない規模だったよね。そういうことで考えたら、日本は各地のライブハウスを回って武者修行というか、先輩たちに囲まれやってきたという部分もあるので、観客が増えたきっかけは海外の方かなとは思いますね。 ーBAND-MAIDの取材をするたびに思うんですけど、チームワークがいいですよね。 SAIKI そうですね、チームワークが武器かと(笑)。 小鳩 海外を回れているのも、チームワークよくできているからだと思ってますっぽ。 KANAMI メンバーだけじゃなく、テックさんとかPAさん、照明さんとか、全員含めてBAND-MAIDはいいチームに恵まれているねって話をよくします。 ー10年間で喧嘩とかはないですか? 小鳩 一般的に言う喧嘩とは違うとは思うんですけど、随時思うことを話し合っていて。気になることがあったら、お互いちゃんと言い合ったりはしていますっぽ。 AKANE(Dr) その場で言うので、解決が早いというか。 SAIKI あと、沸点が高いときには絶対に話さないですね。あ、怒ってるみたいなときは、また話そうねとあらためて対話する機会を設けて、ちゃんと問題を解決します。 小鳩 普段からたくさん話せているからこそ、できることかなって思いますっぽ。 ーあと、MISAさんのお酒の量は大丈夫ですか(笑)? ステージ上でも飲まれるほど、お酒好きですよね。 MISA(Ba) 昔ほどは飲まなくなりました(笑)。大人になりました。 KANAMI BAND-MAID、お酒の量減ったんじゃないですか? 小鳩 減ったと思いますっぽ。全員減りましたっぽ。 SAIKI 寝るのも早くなりましたし。 小鳩 年月を重ねてね。 SAIKI やっぱり長く続けるために。 MISA 適度なお酒と健康が大切です(笑)。 ーBAND-MAIDはメンバー全員がデータで楽曲制作のやりとりをされているのも武器ですよね。今回アルバムの楽曲制作をする上で、環境のアップデートはありましたか? AKANE 私は自分のドラムセットにマイクを立てて生音プリプロをして、そのデータを共有するようになりました。それは練習にも取り入れているんですけど、自分で実際に音を録音して聴いて確認できるのが大きいですね。 SAIKI それ、大きかったよね。フィルとかソロを作るとき、これまではAKANEが打ち込みで作った音を実際生でやってみたら違ったってことがあったけど、それがなくなったよね。 AKANE 打ち込みだと生っぽさというか、人間らしさが出しにくい部分があったので。 KANAMI 打ち込みじゃないAKANEの生のオーディオデータをもらえる環境になったのは、すごくありがたかったですね。 SAIKI 私はマイクを買いまくったり(笑)、防音ルームがある自宅に引っ越したんです。歌が一番騒音問題で言われるんですよ、うるさいって。だから、それを言われないための部屋を用意して。それで、いつでも歌えるよ、いつ送ってくれてもいいよみたいになりました(笑)。 KANAMI 仮歌がほしいときにめちゃくちゃ助かるんですよ! 質がめちゃくちゃ上がったのはありますね。 ープリプロの時点で、メンバー全員エンジニアっぽい感覚で録っているというか。 KANAMI 私たちのプリプロって、普通のバンドとちょっと違うみたいで。スタジオに入って全員で合わせることはあまりなくて。MISAとAKANEと3人で入って、ベードラを見させてもらうことは曲によってはあるんですけど、パソコン上のやり取りでプリプロをやっちゃいます。もっとたっぷり時間があったらみんなでやれたらとも思うけど。 小鳩 BAND-MAIDはツアーをしながら制作をすることをずっとやってきたので、その中で自分たちのできる最大限のものをと頑張っていますっぽ。 SAIKI 私たちの傾向的に、全員でスタジオへ入って固めていくのはあまり合ってないよね。 KANAMI でも次回さ、制作面で変わったことありますか?って訊かれたとき、実は……! 小鳩 やってみましたっぽ!っていうね。 SAIKI この曲をスタジオで固めたんですっていうのをやりたいね(笑)。 ーそしたら曲もまた変わりそうですもんね。 SAIKI 絶対変わると思います。すっごくシンプルになりそう。 小鳩 削って削ってっていう。次回ぜひまた訊いていただければっぽ(笑)。 ーわかりました(笑)。そして3年半振りのスタジオ・アルバムが完成しました。 KANAMI 3年半もかかったかーってね。 ータイトルの『Epic Narrative』は、どういう想いを込めたタイトルなんでしょう? SAIKI 3年半という年月は、私たちにとっては長くて。シングル曲も入っているので、そのときそのときの自分たちがいる。最新の私たちとは違う部分もあるし、10周年をまたいでいるというのもあるので、今まで私たちが描いてきた物語を伝えたいと小鳩と話していました。ストーリー、ではないんだよね、みたいな。 小鳩 今までの歴史があって、今があるというのをぎゅっとまとめた作品なので、物語だけどストーリーではないっぽと。それで「Narratives」って単語を最初見つけたんですっぽ。Narrativesって翻訳すると物語という意味ではあるんですけど、語り手がいる物語。あなたが語り手にもなれるし、自分が語り手にもなれる。双方の関係が成り立つ部分で、「Narrativesはどうかな?」ってメンバーに伝えたとき、いいと思うって言ってくれたんですっぽ。同時にあと一歩とも言われまして(笑)。すごくいいんだけど、それだけじゃ何かが足りないというので、壮大なものをぎゅっと詰めた感じを出したくて、Epicをつけましたっぽ。 SAIKI 順々にっていう意味の単語もあったんですけど、広い空間にあって自由に語れるんだという世界観を言葉からもほしいというので、小鳩がEpicを見つけてくれて。BAND-MAID新章開幕とも言っているので、これからもあるんだぞ!って意味合いがありますね。 ー2022年リリースのEP『Unleash』では、1曲目がインスト曲でした。今作では最後にインスト曲「Get to the top」が入っています。最後にどうしてもインスト曲が必要だったそうですね。 SAIKI インスト曲はBAND-MAIDの魅力の1つだと思うんです。アルバムを久々に出せるということで、曲が揃っていった中で、インストが絶対に必要だなって直感的に思ったんです。新章ということもあるので、新しいインストを作るべきだなというのと、お給仕の面でも、まだ見せられる幅の広さを作りたいなというのでKANAMIにお願いしました。 KANAMI 楽曲制作が終わったー!ってなった後に、やっぱりインストがあった方がいいかもと言われて、そうだよね~と。 小鳩 あと、収録曲の最後にした理由ですっぽね? SAIKI 私は、アルバム収録曲の一番最初にインストがくるのが嫌なんですよ(笑)。 小鳩 『Unleash』はEPだったからよかったんだっぽね(笑)。 SAIKI あと曲の雰囲気が一番の理由ではありまして。KANAMIはまだまだガンガンやっていく気だなっていう熱量をこの曲に感じて。バンドの可能性もまだまだあるので、敢えて最後にしたんです。 小鳩 まだまだ上がってやるぞ!もっと上に!という気持ちを込めてこのタイトルにしたので、アルバムの最後の曲だけど、ここからまた!という部分を強く感じてもらえたらなと思ってタイトルはつけていますっぽ。そういう意味でも、終わりにも始まりにもなる。そういう部分を感じてもらえたら嬉しいですっぽ。 ー前回はインスト曲「from now on」が、AKANEさん的に過去一難しい曲とをおっしゃっていたんですけど、プレイスタイル的にはいかがですか。 AKANE さらに超えてますね(笑)。 SAIKI 最近、「from now on」の演奏でそんなにハーハーしてないよね。 AKANE 息、できるようになりました。すごいですね、人間は(笑)。 小鳩 慣れと成長っぽ(笑)。 SAIKI AKANE自身が日々向上しているので、どんどんできることが増えちゃうんですよ、彼女の技術力が上がっちゃって。 AKANE ドラムに限らず全員上がっているから、もう下げられないですね。 小鳩 昔からBAND-MAIDって、楽曲ごとに自分たちの首を絞めるというか。それによって自分たちの中でも成長点を高めていくとことがあって。そこは楽曲を作る上で大事にもしている部分で。そういう意味でもどんどん難しくなっていますっぽ(笑)。 KANAMI 気づいたら、難しくなってたの! 難しくしちゃうぞ~って思っているわけじゃないんですよ。ちなみに、MISAは自分でベースをどんどん難しくしていってます。 MISA かっこいいデモ曲が来るので、それに応えるってなったらそうなっちゃう(笑)。 小鳩 みんな自ずとそうなっちゃうんですっぽ。