練習で打撃投手を務める星稜の奥悠真マネジャー＝金沢市の星稜高グラウンドで

　◇「広い視野と自覚持って」 　３月１８日に開幕する第９４回選抜高校野球大会に出場する星稜。チームを陰で支えるのがマネジャーだ。その役割は公式戦の記録管理や練習のサポートはもちろん、来客への対応など多岐に渡る。昨夏、就任した奥悠真さんは（２年）は、学校の生徒会長も務め「自分の行動がチームや学校の行動につながる。自覚を持って取り組みたい」と意気込む。【深尾昭寛】 　奥さんは小学３年から野球を始め、中学から星稜に入り、甲子園を目指してきた。昨夏の石川大会後、新チームのマネジャー就任を打診された。公式戦のメンバー入りを目指して練習に打ち込んできただけに葛藤があったが、「マネジャーとしてチームの力になろう」と決意した。 　マネジャーの仕事は多岐にわたる。試合ではベンチに入ってスコアを記入する。昨秋の公式戦では初めてベンチに入り、仲間の活躍を記録していった。 　日ごろの練習では、ノック用のボールなどの準備だけでなく、打撃投手を務めることもある。痛んだボールを見つければきれいなものに替え、ごみが落ちていることに気付けばすぐに拾う。また外部から来客があれば駆け寄って対応をする。 　さらに約５０人という大所帯のチーム全体を見渡し、部員が感じていることを聞き取って、主将とチームの方向性を話し合うなどメンバーやベンチ入りを目指す部員との「懸け橋」としての役割も求められる。 　林和成監督は星稜でのマネジャーの役割について「主将と同等に重要なポジション」と語る。「部員に意見を言えて、信頼されている子でないとできない。彼なしではこのチームは成り立たない」と語る。奥さんは「（マネジャーの）先輩方と比べるとできていないところがあり、まだまだです」と謙虚に前を向く。 　一方で奥さんは生徒会長に立候補。「コロナ禍で学校行事や輝く場所がなくなっている。地域貢献などで輝く場所を取り戻そう」と訴えて昨年１０月に就任した。部員の練習をサポートした後で、生徒会の行事に向かうこともある。「マネジャーも生徒会長も責任ある立場。視野が狭くなりがちで慌ててしまう性格なので、広い視野を持ちたい」と話す。 　星稜のマネジャーは数多くの役割を果たすだけに、経験者の中には進学後も請われて大学野球部のマネジャーとして活躍するＯＢもいる。山下智将部長はマネジャーの仕事の本質を「チームが試合や練習に集中できる環境を整えることだ」と指摘した上で「生徒会長として生徒をまとめるという経験がマネジャーとしての役割にも生きてくれれば」と期待する。