アマゾン、米AI新興に追加出資 総額6000億円
米アマゾン・ドット・コムは、生成AI(人工知能)開発の米新興企業、アンソロピック(Anthropic)に追加出資した。AI開発競争で、米マイクロソフトや米グーグルなどに対抗する考えだ。 ■ アマゾン、過去最大規模のベンチャー投資 アマゾンは2023年9月に12億5000万ドル(約1890億円)をアンソロピックに出資しており、その際いずれか一方の申し出により、総額を40億ドル(約6050億円)に増額できると明らかにしていた。今回27億5000万ドル(約4160億円)の出資を実施し、アンソロピックへの総出資額を上限の40億ドルに引き上げた。英フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、この金額はアマゾンにとって過去最大規模のベンチャー投資となる。 アマゾンのアンソロピックへの出資は、両社の戦略提携の一環だ。アンソロピックはアマゾンが自社開発するAI用半導体を活用し、AIソフトウエアを構築・展開している。アマゾンはアンソロピックの技術を、クラウドコンピューティング「Amazon Web Services(AWS)」で提供し、顧客企業が生成AIを自社サービスに組み込めるようにしている。 米オープンAIの生成AI「Chat(チャット)GPT」の大成功を受けて、テクノロジー大手やベンチャーキャピタルがAIスタートアップ企業への投資を加速させている。米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、23年の生成AI企業への投資額は290億ドル(約4兆3900億円)を超えた。
マイクロソフトはオープンAIに累計130億ドル(約1兆9700億円)の出資を行い、包括的なパートナーシップの一環として、オープンAIの理事会にオブザーバーを派遣している。これに対し、アンソロピックはアマゾンのほか、グーグルからも出資を受けることで、複数のクラウド基盤企業と提携する。これはオープンAIがマイクロソフトと結んでいる独占的パートナーシップと異なるものだ。今回の総額40億ドルの出資後もアマゾンはアンソロピックの少数株主にとどまる。一方、米連邦取引委員会(FTC)は24年1月、AIシステムの競争環境に与える影響について、テック大手による投資や提携について調査していることを明らかにした。 アンソロピックは21年にオープンAI出身の兄妹、ダリオ・アモデイ氏とダニエラ・アモデイ氏によって設立された。同社は生成AIの基盤となる大規模言語モデル(LLM)「Claude(クロード)」を手がけている。同社の発表資料によれば、最新モデルの「Claude 3」は、業界ベンチマークにおいてオープンAIの「GPT-4」を上回っている。 ■ AIスタートアップに巨額投資もクラウドで回収 こうしたAIスタートアップへの巨額投資は、クラウドサービスを提供するテック大手にとっても利益をもたらしているようだ。WSJは23年、情報筋の話として、アンソロピックが今後5年間でアマゾンのクラウドサービスに40億ドルを支出することを約束したと報じた。 23年11月にはグーグルがアンソロピックに20億ドルを追加出資することに合意したと報じられた。だがWSJによれば、この合意はアンソロピックがグーグルのクラウドサービス「Google Cloud」に30億ドル(約4500億円)以上支出することに合意した数カ月後に行われた。 オープンAIもマイクロソフトのクラウドサービスに数十億ドルを費やしている。これらAIスタートアップの最大のコストがクラウドコンピューティングの利用料であることを考えると、出資金のほとんどはクラウド収益という形で、テック大手に還元されることになるとWSJは指摘している。
小久保 重信